辛口の中に光るサッカーと日本代表への愛情
★★★★☆
オシム節が炸裂しています。
W杯ベスト16で喜ぶ日本に
エッジの利いた釘を刺しこむ。
予選通過の勝因から
2014年W杯への課題と展望。
最後には
自分自身もピッチに戻りたいとの願望。
表現こそ辛口ですが
サッカーへの愛情に満ち溢れた内容になっていました。
病状は、まだ完全に回復していないとのこと。
グランドで指揮する姿を見たいファンとして、
一日でも早く元気になられてください(笑顔)
オシムこそ、最強のキュレーター
★★★★☆
ご存じ、イビチャ・オシム氏が南アフリカ・ワールド杯を振り返り、そして2014年ブラジル大会までに日本が何をすべきか熱く語った一冊。日本代表の全試合、各選手について、審判、Jリーグ、優勝したスペイン代表、戦術、観客、マスコミ、JFA、ザッケローニ等、我々が知りたい全方位のテーマに対する言及がなされており、氏の日本サッカーへの深い愛情を感じる。
読み進めていくうちに、ふと、オシムこそ現在考えられる”最強のキュレーター”なのではないかと思った。
キュレーター=情報を収集し、選別し、それらに「意味づけを与えて」、共有する人。
オシムほどの人をつかまえて”キュレーター”とはいささか失礼な感もある。ただし、彼の発言は常に意味づけ、方向づけにとどまる。それは、本来考えてしかるべき人への配慮でもあり、叱咤でもある。ヒントは言うけれど、絶対に答えは言わない。例え時間がかかろうとも。
彼の行っている意味づけは、シンプルで明解だ。「リスクを冒せ!」
オシムいわく、「今大会は史上最悪のワールドカップ」だったそうだ。これは、今大会が人類にとって初めて、ソーシャルメディアと共にすごしたワールドカップであったことと無縁ではあるまい。なぜなら、選手が一番戦わなければならない相手は、失敗に対する批判であるからだ。そして、情報化が進むにつれ、相手は巨大化していく。
2014年ブラジルワールドカップまで、我々もまたサッカーファンとしてのリテラシーを高め、優れたキュレーターになっていかなくてはならない。正しいプレッシャーをかけることこそ、選手の「リスクを冒す」能力を育てるに違いないからだ。
その発言から、実現しなかった夢を見る
★★★★☆
前著『考えよ!』』からの引用も多く、直接繋がる続編と言える。
著者の主張は変わっていないので安心できる一方、新味に欠ける印象も。
W杯後の最新情報に拘らなければ、前著か本書のどちらかを読めば十分かも。
あとは今まで俺が気づかなかっただけだが、この人、結構な皮肉屋のようだ。
ただし“批判のための批判”ではなく、あくまで“勝つための”、もっと言えば“サッカーという芸術を愛するが故の”批判であることは間違いない。
だからある意味で冷静ではないし、誰に相手にしても自分の理想を主張する。
本当に、この人が監督のままだったら日本代表はどんなチームになったのか。
南アフリカ大会でベスト4を達成したかもしれない。
予選リーグで3敗して舞台を去ったかもしれない。
ただ、一大会の結果以上の財産を残してくれたはずだ、とは思う。