相振り飛車を指す楽しみをまたひとつ教わりました
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本書は、次の2つをテーマに構成されています。
1.先手向い飛車VS後手三間飛車(矢倉囲い)
2つの攻め筋「斜め棒銀」「4手角」について、高矢倉に対しては、自陣の囲いが、
二枚金の場合は前者が、高美濃の場合は後者が、有効であること。平矢倉に対しては、
▲8五歩一歩止め作戦ともいうべく、飛車先保留型向かい飛車から四間飛車に振りなおす
指し方が、興味深く詳細に解説されています。また、最後に著者の実戦からの3例
(うち2例は△3四歩一歩止め作戦)が、定跡編を補う内容となっています。
2.4手目△3三角戦法
後手番用の戦法なので、手順や図面は先後を逆にしての表記で、超攻撃的な8手目
▲8六歩(実際は△2四歩)の△3三角戦法がメインの解説となっています。続く第4巻
ではその対策を中心にさらに深く掘り下げるとのこと。今から待ち遠しい限りです。
矢倉囲いは、縦からの攻め筋が主となる相振り飛車では、上部に厚みのある囲いである
ことから有力な囲いですが、駒組みにおいて▲4六歩(△6四歩)と突くことが、争点を
つくる結果となり、逆に相手に攻め筋を与えてしまうことがあります(その意味では、
高美濃への組み換え時にも、同じことが言えます)。そこで現在の矢倉囲いは、▲4六歩
を突かない、つまり、仕掛けの糸口を与えない駒組みが主流となっています。
そういう現状を踏まえてでありましょう、本書では、「高矢倉」「平矢倉」「高美濃」
「平美濃」の図面を示すとともに「平面的な囲い」「立体的な囲い」をキーワードとして、
より精密な解説が展開されていることに驚かされ、感動さえしました。また、囲いは決め
ない、必要に応じて補強するという「達人の戦い方」が、最終章で補足という形で説明
されていますが、たいへん参考になる考え方だと思います。
定跡にとらわれることなく、自由に指せるのが魅力の相振り飛車にあって、大きな指針を
示してくれるシリーズの一冊としておススメします。