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社会科学者のための進化ゲーム理論―基礎から応用まで

価格: ¥3,990
カテゴリ: 単行本
ブランド: 勁草書房
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ある意味画期的かも ★★★★★
 本書は進化ゲーム,とくにレプリケーターダイナミクスと,これと関わりの深い学習ダイナミクスの数学的性質,および分析手法を社会科学系の学生向けに解説したものである.その最大の特徴は,ごく初歩的な数学知識を前提として,これらの話題に関する基礎と応用を極めて丁寧に解説したことにある.いささか皮肉を交えていうならば,これは数学者のいう「丁寧な解説」ではなく,文字通りに丁寧な解説がなされており,著者の教育経験が本書のいたるところで反映されている.進化ゲームの数理的側面に関係する書籍の中ではもっとも親しみやすい,しかしながら安易にレベルを下げていない快著ではないだろうか.
 本書を読み終えた後で,さらに進化ゲームに関する知識を補完するには進化的意思決定 (シリーズ意思決定の科学)が良いであろう.もし時間的余裕があるならば,たとえばゼミナール ゲーム理論入門(これも好著である)でゲーム理論の基礎固めをした後にこれを読むと,さらに理解が深まるであろう.一方,シミュレーションを交えた議論への展開を考えるならば,つきあい方の科学―バクテリアから国際関係まで (Minerva21世紀ライブラリー)やゲーム理論と進化ダイナミクス―人間関係に潜む複雑系 (相互作用科学シリーズ)が参考になるであろう.ただし,後者は若干,数学の敷居が高く,ミスプリントが多いので注意が必要である.
 本書の文献案内で言及されているEvolutionary Game TheoryやEvolutionary Games and Population Dynamics(進化ゲームと微分方程式)は研究者向けの上級書である.これらの本にチャレンジするのであれば,ゲーム理論はもちろんのこと,微分積分,線形代数,集合と位相,および力学系の基礎を固めた上でないと無理がある.
 最後にいささか気になった点を述べれば,命題5.10と5.11の証明中におけるいくつかの等式は近似的に成立するものであることを明言しておくべきだったかもしれない.