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行動ゲーム理論入門

価格: ¥6,222
カテゴリ: 単行本(ソフトカバー)
ブランド: NTT出版
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ゲーム理論の現代の地図と,道しるべ ★★★★★
 なんといっても,本書はミクロ経済学を勉強する上で,これ以上ないショートカットになっていることが最大の特徴である.もし大学生や大学院生ならば,勉強会で論文を読んで話し合うより前に,この本を読むべきだ.数年間分を節約することができる.テーマのもとになっている,原典の論文の正確な紹介から,現代の学会上での議論までわずか数ページ.しかも,ゲーム理論やセッティングを直観的に理解できる様々な事例にあふれていて,有名な映画や小説のシーンをゲームのシチュエーションとして理解できるうえ,飽きることがない.本に黒い筋がついたり,寝てしまったりすることはない.
 
 タイトルの「行動ゲーム理論入門」とは,ゲーム理論が,整合性や仮定の妥当性を議論される時代が終わり,現実妥当性という厳しい審査を受けていること,それを検証するための実験が行われていることを示している.それを,思い切って行動経済学者と実験経済学者の対立軸としてみせいているのが,読みやすさにつながっている.
 行動経済学の立場を,人々は規範的経済学からかい離しており,アノマリーに満ちたものとするならば,実験経済学者は,伝統的な理論が仮定する人々の合理性を信じる立場に近い.読むものは,わくわくしながら,どちらに軍配が上がるのかを楽しみに読み進めることができる.それが明確になるのが,第3章の学習理論あたりからで,第4章では,実験の結果わかったアノマリーを説明すべく導入された利他性,互恵性などの理論も,相手の行動のなん歩か先まで読む高次の予測に基づいており,その意味では合理性が仮定されることが説明される.さらに,そのような結果が実験では得られるはずはなく,人々は,限定合理的であるという概念が導入される.
 ここからが,この本の魅力であり至れりつくせりなところである.勉強したばかりのレベルk(何次先まで相手の手を読むか)という,限定合理的概念を使いって,実験結果を解釈するためには,ロジット均衡について学習すればよいことが第5章でわかる.しかも,その計算方法がなんとエクセルで紹介されている.こんなに後を歩くものは楽をしてもいいのだろうか...
 第6章のコーディネーションゲームでは,オー・ヘンリーの「賢者の贈り物」のデッたドウエイトロスが論じられたり,第7章では,マッチングゲームとしてシェイクスピアの「真夏の夜の夢」が語られる.知識の集積はもはや学問の領域を超えたようである.第7章の圧巻は,やはり,インセンティブ両立性を目指すメカニズムデザインとして,どのメカニズムが優れているのか,体系的に理解できるところにる.

 第0章で広げられたのが地図ならば,著者が用意したのは道しるべでありは,著者自身の行く先はエピローグで力強く述べられている.私は手に汗握る気持ちでこれを読んだ.まるで一つの歴史大作を読み終えたような気持ちになるだろう.これは川越氏が用意した,学問を楽しんでほしいという舞台装置に乗ったせいだ.学問とは知識の累積であり,厳しくも楽しい,豊かさをもたらす戦いであり,そこに参戦するのは今日からでも可能だ.ぜひ,試してほしい.