お勧め
★★★★★
かなり頻繁に版が更新され、新しいトピックスも盛り込まれている。学部生には標準的な教科書。有機化学が好きな人には、物足りない面もあるが、解説がすっきりしている点、反応式を縦に書くことで、電子の流れを理解しやすくしている点など満足いく面が多い。理屈が好きなら、モリソンボイドも良いが、とにかく回りくどい。マクマリーは、官能基で分類されて説明する方式が取られている。一方、パインなどは、反応別に分類されて説明する方式がとられている。どちらも一長一短であるが、初めて有機化学を学ぶには、官能基別の記載の方が理解しやすく思う。ただし、マクマリーを一通り学んだら、ウォーレン有機化学、マーチ有機化学、さらに各論の名著へ進むべきである。特にウォーレン有機化学は、学部生用とは言いつつも、かなり有機合成の好きな人も満足できる内容であり、マーチ有機化学は辞書代わりに使うべきである。
いろいろな有機化学の著書はあるが、ひとつの著書だけでは不十分で、相補的に補う必要がある。本書はそういう意味で、もっていて損のない教科書である。訳もこなれており伊東グループが担当している。