だけどこの絵本はそれだけではありません。単なるクマ狩りの話以外に、オクセンバリーが忍ばせた、愛と拒絶の物語。仲の良い団結力のある子ども達グループと、彼らに拒絶されるクマの対比。今一度ページをめくってみてください。ほろ穴でクマに遭遇するページ以外、クマはみな気弱に描かれています。クマは悪者に見える一方で愛を乞う人(熊?)なのです。
ボランティアで読み聞かせをしていますが、小学生にこの本を読んであげると、「クマにつかまらなくてよかった~」と言う子と、「クマさんかわいそう!みんなとあそびたかっただけなんじゃないの?」という子の両方がいます。クマ狩りの立場でストーリーを追ったときと、クマの立場で追ったときとで感じるものが全く異なります。オクセンバリーは「狩り」という言葉に、排除される異質なものへの哀しみを込めたかとも思えます。
単純にクマ狩りを楽しむのもよし、心の旅にでるのもよし、読む人の心のありようをがっちり受け止めてくれる、守備範囲の広い絵本です。