潜水艦乗員の戦争体験
★★★★☆
元潜水艦乗員が、当時の日記を元に書いたノンフィクション。
乗艦していた伊25号が参加した真珠湾攻撃やアメリカ本土を爆撃などの作戦
の様子を当時の日記を元に書き起こしている。
書かれたのは、昭和35年。書いたのは、兵曹長(終戦時)。
将官ではないので、大局的な視点ではなく、潜水艦の艦内から、兵や下士官の目
に映った世界が描かれている。
戦略も戦術もなしだが、潜水艦乗員がどんな日常を送っていたかが良くわかる。
艦長以下の将校に命じられるままひたすら忠実に軍務をこなしてゆく毎日は、
肉体的にはつらく死の恐怖もある。しかし、国を信じ、軍を信じ、艦長を信じ、
敵を憎む軍国思想で統一された艦内生活は、同じ目的を持つ者どうしが、
強い連帯感をもち家族のように支えあって生きる世界であったようだ。
艦内では、戦争行為(適を殺すこと)を肯定的にとらえており、迷いはない。
潜水艦の乗員、水兵の日常を垣間見ることが出来る本である。