各種水上偵察機の現実を網羅する貴書
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元海軍の水上機パイロットが、昭和13年の予科練卒業から終戦後1ヶ月を経た20年9月までを記録した戦記。
筆者は、実に幅広い経験をしています。
そのいくつかをあげると
作戦面では
・真珠湾攻撃前の艦隊再編と集結、訓練
・真珠湾攻撃(筆者はハワイには飛ばず)
・潜水航空母艦伊37号でのアフリカ偵察
・ナチスドイツの潜水艦との作戦
・インド用での通商破壊戦
・パナマ運河爆破計画の顛末
その他面では、
・少尉の給与、潜水艦手当、航空手当や特攻出撃前に支給された慰労金
・潜水艦搭載用水上偵察機「晴嵐」の開発から実用化と実戦での運用
・95式水偵、零式水偵など各種水上偵察機の詳細やパイロットとして感じた特性
・伊号潜水艦の米潜水母艦による接収と米国への回航
・5ヶ月分の食料を積んでの出航するなど豊かな潜水艦の食糧事情
・潜水艦に3本ののぼり旗をたてて特攻出撃する様子
などなど実に多様です。
潜水艦航空母艦としての伊号潜水艦の前線での様子もよくわかります。
航空機を搭載しなかった伊号も多ったようなので、水上機搭乗員の戦記は貴重です。
潜水艦だけでなく、陸上基地や重巡洋艦での水上機操縦員としての経験も書かれています。
気負いのない淡々とした文章は、読みやすく、当時の様子をよく伝えているように思えます。
興味深い情報がいっぱいです。
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終戦間際に、パナマ運河攻撃を計画した、伊号400潜水艦乗り組み、晴嵐搭乗員の手記。
いつもながら、日本海軍の士官と下士官の対立、上層部の無能さがわかる。
興味深かったのは、マレーシアのペナン島の潜水艦基地に、ドイツのUボートが10隻ほどいて、一緒にインド洋の通商破壊戦をやっていたという話。
また、伊号37潜水艦でインド洋で商船を沈めたとき、命令によって乗組員を殺したこと、これが終戦時には問題視されていたこと。
高橋氏は、なんと、潜水艦搭載の小型水上機で、インド洋のチャゴス環礁、マダガスカルのディエゴスワレス港(現、アンツィラナナ)、アフリカのモンバサまで偵察した。
日本軍のインド洋作戦など、まだ公になってない部分が多いのではないかと思わせる。
とにかく、ほかの戦記本にはない、興味深い情報満載です。