第二次世界大戦からベトナム戦争までの時代
★★★☆☆
本書は本シリーズの中でも特殊な構成になっている。1巻から23巻までを担当してきた著者の中から13人が「戦後の世界」と題されたシンポジウムで発言した内容が紙面の半数を占めている。中央公論者が出版した「世界の歴史」と比較すると本書の方が難解で、文化史や倫理史、科学史などの情報を求めている方は河出書房の方をおすすめする。最終章では、桑原氏の難航したブータン旅行記をとおして、戦後の世界は第3世界が主役になると結んでいるが、ソ連の崩壊や中国・インドの第3世界の台頭を見事に予言していると思う。50年代の本書でまとめられている内容を読むと、2010年現在の社会の軽薄さや甘さを感じてしまう。活気を失った日本社会再生の答えやヒントはこの時代から得られるのかもしれない。