著者の意図では、ロシアの革命が必ずしも必然的なものではないということを示したかったとのことですが、その意図は十分に達成されています。それに、私は今まで、レーニンの思想というものが、具体的にどのような特徴があるものなのかよく分からなかったのですが、本書ではロシア史の中でのレーニンの位置を示しながら説いているのでとてもわかりやすく、それがいかに独自なものであるかも知ることが出来ました。これを知れば、それからの共産主義の理解にも役立ち、近代史を学ぶ上での基礎知識を得ることにもなると思います。それに、ボリシェヴィキ、とメンシェヴィキの違いなどロシア革命を彩る諸派の履歴も詳しく、特に二月革命から、十月革命までの複雑奇怪な権力闘争の理解も進むのではないかと思います。イデオロギー論争など、勢い小難しくなりがちな内容ですので、比較的には分かり安く書かれてはいますが、さらっと楽しく読み進むとはいかないでしょう。それに近代ロシア史の解説に主眼が置かれているわけではなく、基本的なもの以外は革命家たちの内輪の話です。その方面に興味がないとあまり面白くはないかもしれません。
本書を読み進んで思うことは、革命というお祭りが過ぎ去っていく過程の虚しさです。収録されている革命家たちの言葉の数々を見ていると、あなたたちはロシアの民衆を救いたいのか、ただ革命をしたいだけなのかと、思わずと言いたくなる思いに駆られてしまいます。何が最善の選択で、どうすれば正解なのかが無いのが歴史で、そうであるからこそ面白いのですが、この中で語られる無数の「正しさ」を見ていると、果たして今を生きる自分は、どんな正しさを奉じて生きていけばいいのか、はたと考え込んでしまうのでした。