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時間と絶対と相対と ―運命論から何を読み取るべきか (双書エニグマ)

価格: ¥3,255
カテゴリ: 単行本
ブランド: 勁草書房
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入不二哲学の新たなる展開 ★★★★★
『相対主義の極北』と『時間は実在するか』によって日本哲学界に独自の地位を確立した入不二の、前二作の続編ともいうべき哲学書である。前二作を未読の読者も問題なく読むことができるし、むしろ本書の方がハードルは低く読みやすいかも知れない。
 というのも前二作がその集中力において傑出した「長編(書き下ろし)」であったのに対し、本書はそれぞれの章がある程度独立した「短編集(既発表論文集)」の構成になっているからである。最初の五章に時間論が、次の三章に相対主義が割り当てられ、最終章で運命論が語られている。
 全ての論文が完成度が高く読み応えがあるが、何といっても注目すべきは最終章の運命論であろう。人間は自由か否かという問題は哲学における永遠の課題であり、これまでは意志論や因果律の観点から論じられるケースがほとんどであったが、入不二はそこへ独自の時間論を適用し、過去や未来とは関係のない「それ以外にありようのない現在」という観点から、全く独創的な形而上学的運命論を提出する。
 2008年度の青山学院学術褒賞を受賞した本書は、入不二哲学の新たなる展開を予感させる好著である。相対主義やマクタガートといった哲学用語が持つ難解そうなイメージからか、その分かりやすさとは裏腹に一般読者には不当に馴染みの薄かった入不二の哲学が、運命論という分かりやすいキーワードの導入によって、一人でも多くの読者に読まれるようになることを願ってやまない。
マクタガートを超えて時間論を深める ★★★★★
著者は、マガクタート研究の第一人者であると同時に、相対主義についての考察で知られる人。本書は最近の論稿を集めたものだが、第2,3,4,5章など、時間を論じた力作が並んでいる。前著『時間は実在するか』と合わせると、マクタガートのパラドックス問題はほとんど論じ尽されたと言えるだろう。著者は、マクタガートのA系列・B系列という枠組みでは「時間の動性」の本当の姿は見えてこないと批判する。過去・現在・未来という時制の一部としての「現在」という平板な理解では、「現在だけがある」ことの、その「だけ」としての「ある」が抜け落ちてしまう。この「<だけ>としての<ある>」は、伝統的に「刹那滅」と言われてきたものに近い。また、「未来が現在になる」という「時間の推移」は、「果物が緑から赤になる」のような通常の変化とは異なっている。この場合の緑と赤とは、「同じものが同時に緑かつ赤ではありえない」という意味での両立不可能性であるが、「時間の推移」における「なる」は、前後の「同じもの」を前提しない純粋な「なる」そのものである。というのも、人間の誕生や死のような「生成・消滅」には、このような「なる」が含まれるからである。そして著者は、「<だけ>としての<ある>」と純粋な「なる」との間の根本矛盾にこそ「時間の動性」を見て取る。このように、エレア派の「ある」とヘラクレイトスの「なる」を共に取り込む著者の雄大な構想が素晴しい。