自分の素晴らしさを教えてくれる本
★★★★★
「ユング心理学」が基本になっていますが、決して堅苦しくなく
大変わかりやすく、印象的に、きっちり書かれていておすすめです。
ユングは、例えば、自分の「良い人」というイメージと矛盾する傾向、
「隠され抑圧され、劣等で罪責感を担った人格」を「影(シャドウ)」と呼びました。
本書の例では、「傲慢」な父親を大嫌いだった著者が、
父親と同じ傾向を自分の中に認め、最初はシャドウとして
心の底に押し込みますが、「傲慢」を「堂々としている」「個性的」「自信にあふれている」
と解釈しなおし(肯定語変換し)、
それも大切な自分と取り込んだ(引き戻した)体験が具体的に語られます。
自分のシャドウを認めない限り、それは(他人に投影しても、自分の内にあっても)「敵」ですが、
もし認め(和解す)れば、それだけ心が広くなるし、他者との人間関係も
ラクになるというわけです。
本書では、シャドウは実は(自分の)最も輝いている部分とあり、
自分のシャドウを抱きしめようと勧めます。
ル・グインの「ゲド戦記(影との戦い)」を思い出します。
さて、冒頭では、興味深い民話(伝説)をとおして、
「うんざり」するほど、イヤな自分(傷つき、悲しんでいる孤独な自分、あるいはコンプレックスなど)と
向き合う、抱きしめることがカギ(チャンス)だと著者は言います。
また、神さまが、大切な宝を、
地の果てや、海の底ではなく、人間の心の奥に
隠したという逸話(44ページ)も意味が深いと思わされ、希望を与えられます。
「ごんぎつね」(新美南吉)や、有名なアンデルセン童話などからも、
「死と再生」他、たいそう深い分析がなされます。
童話(「泣いた赤おに」も含む)や伝説、説話など散りばめ、
飽かせず、読み勧められます。
内容は、読んですぐに使える実際的なものも多いですが、
奥が深く、数年ごとに読み返すと、より励ましや癒しが深まると思います。