育てなおし、やりなおしは可能なんだ
★★★★★
妻の仕事関係で購入した本をつまみ食い程度に読み始めたところ、…いくつもの症例が実に説得力があり、引き込まれて一気に読みました。「心の発達は前進ばかりじゃダメ」というくだりには思わず唸ります。これ、大人の人間的成長にも言えますよね。
やりなおしも出来る、ちゃんとやりなおして通るべき道を通ってヒトは豊かになっていくのだということを教えてくれた本です。
著者の他の本も読んでみたいですね。
「人の心は深い井戸に似ている」
★★★★★
はっとして思わず線を引いてしまった箇所を書き出します。
「人の心は深い井戸に似ている」
・・・ここにもし2つのよく似た井戸があり、1つには密かに金銀が、もう1つにはクズ鉄が投げ込まれたとしましょう。金銀もクズ鉄も一瞬、水面に波を立て、跡形もなく井戸の深みに消えてしまえば、どちらに何が投げ込まれたかは忘れ去られてしまうでしょう。
月日が経ち、地震が起きて井戸の底が揺さぶられ、1つの井戸には金銀が、もう1つの井戸にはクズ鉄が浮かび上がる時、人は2つの井戸に沈んでいた物の違いを知ることになるでしょう。
人の心も深い井戸に似ています。日常、何気なくやり過ごしてしまう出来事は、井戸に投げ込まれた石のように、必ずある波紋を心の表面に引き起こして、心の底に沈んでいきます。
育児で心が疲れ、意思とは裏腹に、子供にきつい言葉を投げてしまう、あるいは子供の話しかけに適当に応じてしまう自分。
この「心の井戸」のことを、いつも思い出さなくてはいけないと思う。
辛い時に辛いって、どうして言っちゃいけないの?
★★★★★
「子ども」目線で読みました。
私と全く同じ症状を出した子が、出てきました。
「もうイイコはいや!」とわがままになった女の子です。
心理学を勉強している私が読んでも、大変わかりやすく
なおかつ深い事を書いている良書だと思います。
「辛い時に辛いって、どうして言っちゃいけないの?」と
昔の私は、親に問いました。
その答えの一つを、この本は導き出したように思えます。
成人してもなお苦しんでいる人・子どもの事で悩んでいる親御さん・
実際に今辛い思いをしている子ども達(文章は平易ですが
中学生以上かな?)にぜひお勧めしたいです。
我が子との付き合いにつまづき始めたら・・・
★★★★☆
初めての子供を妊娠したとき、友人から勧められて読みました。
昨今の癒しブームに抵抗感があったので、読みにくいかなと思いましたが、むしろ、多少は親となる自分自身にも”癒し”(自己肯定感)が必要なのかなと思い至る読後感となりました。
晩婚化、高齢出産が増える中で、現代の親は大人社会の価値観に馴染みすぎてしまい、我が子が示す子供独特の心理に、いざとなるとついていけないケースが増えていると思います。幼い子供の言動を大人の尺度で突っぱね続けているうちに、いつの間にか子供の心の健全な発達を阻害し、子供の心に傷を残してしまう・・・そうしたトラブルへの対処法が、この本には丁寧に書かれています。
すべての子供が繊細で、親の態度から深刻なダメージを受けるとは限りませんし、この本の主旨は、甘やかし一辺倒の子育てを推奨するものでもありません。既に心身症を起こし始めているお子さんをお持ちの親御さんに本書はお勧めだと思います。心身症とまでは言わなくても、いわゆる「困ったちゃん」にホトホト悩まされている親御さんにとって、本書は、問題解決のためのヒントが見つかるチャンスになるかもしれません。
我が子と上手に向き合えない場合、その親自身が、幼児期に何かしら満たされなかった部分を残していて、現在も潜在的に苦しんでいることもあり、そこから育児の悪循環が引き起こされていることもあるそうです。この本を読むことで、そうした悪循環に気付き、断ち切る勇気が得られるならば、それは育児を担う者にとっても育てられる子供にとっても、とても貴重なチャンスだと思います。
”こうやって育てるべき”と主張する育児本の押し付けがましさはなく、とても優しい語り口の良書だと思います。ただ、重篤な心身症に陥ったお子さんの症例を続けて読むと、必要以上に身構えてしまうこともあるかもしれません。妊娠中などに予め読むよりも、子供との接し方にいざつまづきかけたり、子供の様子に不安を感じ始めてから手に取る方が良いかもしれません。