宇宙観の歴史から学ぶ
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望遠鏡発明以前の天文学の歴史を貴重な資料で俯瞰した本である。
望遠鏡による直接の観測ができない以上、肉眼による観測データからいかに理路整然とした宇宙観を構築するかが問題となってくる。特に古い時代は神話、占星術のかかわりで始まった「空への関心」であるが、試行錯誤、紆余曲折を経て発展していく。
それは我々の世界観、人間観、宗教文化、数学、物理、合理的思考と深くかかわっており、天文学の進歩は社会の近代化の指標と言えよう。
また、それも単線論的に発展したのではなく、地動説が天動説に「退化」したり、ギリシア→イスラーム→ネルサンス期ヨーロッパと展開したように、多元的な世界史を理解するよすがとなる。
「昔の人の宇宙観は幼稚であった」と笑うの簡単だが、遠い未来に「21世紀初頭の宇宙観は幼稚であった」と笑われるかもしないかと想像するべきだ。昔の人々は技術的制約にかかわらず知恵を振り絞って偉大な成果を残してきたのだ。与えられた環境で知性の限り、全力を尽くすのが、本書を読んで歴史を学んだ者の真摯な態度であろう。