近代社会を支える科学的自由精神が問われる
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国立天文台の調査によると、中学生の42パーセントが「太陽が地球を回る」天動説の持ち主だったという。これに危機感を抱いた筆者が、「天動説」と「地動説」のせめぎあいという観点から、天文学の歴史をわかりやすく、またエキサイティングに書き上げたのが本書である。
エジプト・中国・メソポタミアから始り、古代ギリシアから中世、そして近代への天文学の歴史が描かれる。それは宇宙観・人生観への問いかけであり、自由な科学的精神の発達のメルクマールに他ならない。
「地球が太陽のまわりをまわっているに決まっている。学校で習ったからだ」。それはある意味ではいちばんまずい。好奇心や探究心をもち、「地球が回っているのか、それとも太陽が回っているのか」と問いを立てて、実験や思索を繰り返していくのが科学的な精神と態度であろう。そしてそれが今の日本の科学教育で求められているものなのである。