偉大なる愚直さ It is not too late to learn.
★★★★☆
著者も記していることだが、レビュアーも愚直・地道は嫌いだった。理論やそれに基づく言動を指向した。かつて、この本を読んで、その考えを改めさせられた。世の中にでて、それがわかるくらい歳をとっていたのかもしれない。日本地図をひたすら歩くという愚直な方法で作り上げた伊能忠敬を主人公にして小説である。田舎の貧しい家に生まれ、その才を認められ、少しは豊かな家の養子になり、さらには江戸の商家の養子となる。小説では妻は悪妻である。忠敬は地道に養子に入った店の商いに身をささげる。そして、妻が亡くなり、還暦まじかの歳になって、忠敬は関心のあった天文学に没頭し、幕府の天文学者とも懇意になり、歩いて日本の地図を作る旅にでる。シュリーマンも子どものころの夢だった古代遺跡発掘を実現するために、まずは資金づくりのため商人に長い年月を費やしたと聞くが、そのエピソードにも似ている。小説の中には江戸時代の学者、文人、豪商が登場し、その人脈のネットワークと江戸時代の文化が浮かびあがってくるのも楽しい。話は主人公が橋の上の犬の糞も歩数計数に集中して踏んでいくところからはじまり、小説のところどころには水戸黄門漫遊記のようなユーモア小説になってしまうのが、著者の持ち味なのかもしれないが本書では、返ってしらけも感じてしまった。人は何歳になっても、どんな方法であっても目的と意志があれば偉業を達成できる事をしみじみと考えさせてくれた。