また、忠敬の人物像や時代背景をわかりやすく解説するだけでなく、NHK大河ドラマの原作を書きたかったという執筆動機や、有名なシーボルト事件の顚末までを書き続ける予定だったことなど、創作の裏話も開陳されている。さらに巻末には、間宮林蔵、山東京伝、平賀源内といった登場人物の紹介をはじめ、「中象限儀」「半円方位盤」など、忠敬が使用した道具類の写真や資料が収録されている。まだ小説を読んでいない人にも、その作品世界をたどることができるようになっている点がうれしい。
「人生50年」の幕末において、56歳になってから3万5000kmを踏破するという大事業を成し遂げた忠敬の生き方が、今日注目されるのは、著者が『四千万歩の男』の前書きで語っているように、高齢化社会において私たちが「『一身にして二生を経る』という生き方を余儀なくされている」からである。『厚生白書』に「新しい高齢者像を求めて」という言葉が躍り、「高齢者の世紀の始まり」を前にした2000年に本書が刊行されたのは、決して偶然ではない。(中島正敏)
「四千万歩の男」の続きかと思って購入しましたがそうではありませんでした。
でも、「四千万歩の男」の本文に出てきた「地球全図」や測量道具などが白黒写真で紹介されていて興味深くみました。
「四千万歩の男」を楽しんだ方におすすめの本です。