☆よりよく生きるための道しるべ☆
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本書は、中国思想史を専門とし、
現在は大阪大学教授である著者が、
中国の説話集『菜根譚』を紹介する著作です。
16世紀、明の時代に編纂された『菜根譚』は、
儒教をベースに、仏教・道教を融合させた人生哲学を論じる処世訓。
筆者は、まず菜根譚がどのように誕生し普及したのかを解説します。
続いて、菜根譚に納められた説話を、
その内容や意味、関連する他の古典の解説などを交えて紹介
終章では、唐代の「顔氏家訓」など『小学』など、処世訓の変遷をたどります
文は拙を以て進み、道は拙を以て成る
人の小過を責めず、人の陰私を発かず、人の旧悪を念わず
−など、含蓄に富む語はもちろん
万暦帝の墓所や中井竹山・履軒兄弟などに関するコラムも興味深かったのですが、
個人的に、もっとも印象深いのは
『菜根譚』に見出しがないのは、読者に自由な読みをさせる意図ではないか
という筆者の指摘です。
単にその場しのぎの世渡り術ではなく
よりよい人格を育み、豊かな人生を送るための手掛かりを与えてくれる本書
中国思想に関心のある方に限らず、多くの方にオススメしたい著作です。