ポリーニの“弾き振り”によるモーツァルトのピアノ協奏曲第2弾。
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ポリーニの“弾き振り”によるモーツァルトのピアノ協奏曲第2弾。2007年のライヴ録音。前回の第17番&第21番に続くもので、これが今後シリーズ化されていくのだとしたら楽しみだ。前回に引き続いて「後期の傑作」と「初期の魅力的な佳作」のカップリングとなっているが、私にはポリーニがベームと録音した第19番と第23番の組み合わせを踏襲するスタイルを意識している様に思えてならない。若きポリーニが尊敬する巨匠と録音したモーツァルト、そしていま音楽家として熟成したポリーニは指揮もあわせてウィーンフィルとのモーツァルトの世界に帰ってきたのである。。。と考えるとロマンチック過ぎるだろうか。
第12番はモーツァルトがウィーンで作曲した最初の本格的なクラヴィーア協奏曲であり、かつ管楽器抜きの弦四部で演奏することも可能なように書かれている。第1楽章から親しみやすい典雅な伸びやかさがあり、落ち着いたポリーニのピアノが安らぎを与える。第2楽章はモーツァルトらしいところどころ哀しい色を帯びた美しいアンダンテで、ここでポリーニのピアノはたっぷりと憂いを含んだ憧憬的な音色で歌っており、昔のポリーニを知るものには隔世の感がある。終楽章のロンドも愛らしい。
第24番はモーツァルトの「短調の世界」を存分に味わえる大曲であり、演奏もこれに即した情感を満たす。シャープなピアノが音の膨らみを警戒し、鋭敏に輪郭線を描いている。たとえば終楽章の感情の爆発も、スピーディーで線的に描かれていて、一つの演奏形態の理想像を示していると思う。一方で、第2楽章の木管楽器との音色の交錯もなかなか巧みで聴き応えたっぷり。部分的に弦楽器が表情を硬くしすぎる感があったが、気にするほどではなく、もちろん名演と呼ぶに差し支えない出来栄え。
ライヴ録音であるが拍手は第24番終了後にのみ収録されている。個人的に拍手は不要と思うが(なお言うとポリーニの音楽はスタジオ録音の方が堪能できる・・)曲間の拍手をカットしてくれたのはありがたい。リスナーのことを考えてくれたのだろう。
K.491の甘美な演奏
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K.453とK.467の一枚に次ぐ、期待されたポリーニのモーツァルトであるが、期待は裏切られなかった。特にK.491(第24番)が素晴らしい。オーケストラはポリーニの弾き振りであるが、各パートの音の混ざり具合が繊細で美しい。ピアノも時にはあたかもベートーヴェンの曲であるかのようなダイナミズムを見せ、全体として、それにしてもポリーニがこれほどと思わせるくらい、とても甘美なモーツァルトに仕上がっている。
K.414(第12番)の方もオーソドックスで悪くない。両曲に共通することであるが、ピアノの音色は水銀の珠を転がすような美しさである。ウィーン・フィルも勿論良い。なお、K.491のカデンツァはモーツァルトのそれではないが、とくに違和感はなく聴けた。