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鏡の影 (講談社文庫)

価格: ¥830
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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ストイックな逸脱感 ★★★★☆
異端審問や魔女狩りの嵐が吹き荒れる、中世ヨーロッパに想をとった物語。「全世界を変えるにはある一点を変えれば充分である」と考えるに至ったヨハネスが、その奥義をモノにせんと各地を巡る、、、というなかなかにキャッチーな設定だが、しかし中身はといえば相変わらず「ながら読み」を否定するピンと張り詰めた空気に覆われている。

これまで大戦間期のヨーロッパが舞台であることが多かった佐藤亜紀の作品だが、今回は先に述べたように中世のヨーロッパ。未だ"魔術"やらの類が公然と信じられてた時代であるためか、貴族の乱交パーティーやら娼婦の夜営地での光景描写などを筆頭に、読中はいつもの冷たく鋭利な感触のリアリティよりも、なんだかひどく幻想的な非現実感を感じていたような気がする。人のウワサだけでいとも簡単に火焙りにされちゃうこの時代。前線にて一瞬で肉塊へと変じてしまう戦場とある意味「人の命が軽い」という点では同じなようでいて、この中世においては逆に、人間存在に近代とは比べ物にならない重みを感じるところも面白い。この辺、生身の肉体よりも魂=精神性みたいなものに重きが置かれているからなのかしらん。

少し話がズレたが、本作における主要な登場人物/ヨハネスとシュピーゲルグランツが、実はファウスト博士と悪魔メフィストフェレスをモチーフとしているんだとか、「そんなん解説してもらわんかったら絶対わからんわ!」という技巧がアチコチに凝らされているところがこの人らしいと思う一方、やはりこの辺に題を取るんであれば、坊主同士の哲学的な問答やら登場人物たちのいろんな意味での超越っぷりやらで、もちっと明白な娯楽性を出して欲しいなぁとも思ったり。読中の高揚感という意味では、この辺のテーマだと佐藤賢一のほうが個人的には好みかな。
いろんな楽しみかたが出来る ★★★★★
初めて読んだときも十分面白かったのですが、その後、たまたま塩野七海氏の「神の代理人」を読んだ際に「あれ?」と思ったので本書を読み返しました。
うーん、読み手の知識に合わせて複数の楽しみ方が用意されているのだ、と理解。
佐藤亜紀の著書は読む側の知識と教養がどのレベルにあっても十分読書の楽しみを与えてくれます。こちらのがレベルアップすれば、また違った「楽しみ」を与えてくれる懐が深い作者です。
相変わらず、うならされます ★★★★☆
最近、「ミノタウルス」を読んで他の佐藤亜紀の作品を読み始めました。
ですので他のレビューが言及している「あの騒動」等が何をさすのか全く分からないのですが、楽しく読みました。
他の作品同様、歴史・地理的な設定・背景についての説明的な描写はほとんどないです。
が、著者の巧みな時代・人物設定で読み進んでしまいます。
中世ドイツ(宗教改革前夜といった所でしょうか?)を舞台に、主人公と、まあほんとに色々な性格・立場の騎士殿、市民、聖職者たちから人外・魔性のものまでとのそれぞれの性格が現れるやりとりがとても楽しく(時に、にやっとしながら)読み進みました。探れば裏には色々と薀蓄がありそうなのに、淡々とした文体でつづられる、人の様々な欲望・狡さ・弱さ・で繰り広げられる小説の舞台に引きずり込まれてしまいました。
「うーん、うまいっ」と読了後、うなっていました。
テーマが取っ付き難いのが難点だが…… ★★★★☆
 読み価値はある作品だと思うが、この人の作品の中ではベストとは呼べない。まあ、某氏が某賞を受賞した某作品がこの作品と何らかの関わりがあって<省略>……、などと色物扱いを受けているが、公平に見ればこちらの方が完成度は高く、読者を引き込む仕掛けに関しても狡猾に練れており、ユーモアもある。まあ、分量的にはむしろ引き伸ばした方が良かったかと思う。著者の作品はだらだらと引き延ばそうとせず、無駄を削る気概があるのだが、この作品はやややり過ぎのように思う。1.5倍ぐらいのページ数で丁度いい、と思うのは私だけか?
 個人的には主人公の「この世の真理を探求しているはずが、徐々に堕落への道に転がってゆく」という駄目人間振りを堪能するのがこの作品の読み方である。
佐藤亜紀ワールドは健在だが。 ★★★☆☆
目次の一章ごとに、題名ならぬ長い「章名」がつくところからして、西欧中世スタイルを模した小説。
佐藤亜紀ワールドは遺憾なく発揮されている気はするが、
スタイルの模写に忙しく、語り口がやや助長に感じる。

個人的には大傑作『1809』の切れのよさが欲しいところだ。