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バルタザールの遍歴 (文春文庫)

価格: ¥660
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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上出来 ★★★★☆
 この作家のエッセイを読んで、ずいぶんえらそうな人だと思った。その毒舌に興味をそそられる形で買って読んでみた。
 ちょっと退嬰的で暗いけど、読者を引きつける表現力も構成力もある。巧い。賞を取ったのもこれなら分かる。
 文句をつけるとすれば、小説全体から湧き上がってくる力というか芸術性というかがもう一押し欲しいところだ。だがそんな文句をつけても仕方ないだろう。
 ノスタルジアを感じさせる娯楽なのだと思う。
 読んで何か問題が解決したりする小説ではないのだろう。もっとも、文学から来る解放感なぞだいたい一時のことだ。敵が死んだところで、主人公が別世界を目指すところで、解放はないのだ。徐々に衰微し、死に向かうなかで、わずかでも渋くても人生の実感を味わう。そういう一種のハードボイルドな感じの味わえる作品だと思う。
耽美ながらも抑制された筆致 ★★★★★
1991年度の日本ファンタジーノベル大賞受賞作。 大分前の作品だけど、決して古くさくない。

ちょっと不思議な小説。耽美的でもあるけど、ちょっと抑制されている感じもあるけど、後半の展開はスリリング。ナチとかの歴史的背景もうまく使われてる。
読んでいない人が羨ましい!記憶を無くしてもう一度、最初の読書をしたいよう! ★★★★★
これはもう、すごい。

講談社とのバトルとかかなりニヒルな人なんだろうと思うけど、
知識のオンパレードといい、筆の運びといい、なんだろう、絢爛豪華?重厚長大?
とにかく鳥肌が立った。
宮城谷昌光氏の中国王朝ものにもやられた感だったけれど、この洗練、瀟洒、軽妙、退廃・・なんだなんだこのカンジ?


もう一回この本を読んだ記憶をなくして、最初から読みたい!
運命の出会いでした(笑) ★★★★★
 この本が出た年の暮れ、ことし最後の本は何にするかと考えながら書店をふらふらしていて、何となく装丁が気に入り買って帰った。読んで仰天、まさに1年を締めくくるにふさわしい運命の出会い的な作品だった。挟まっていた解説書に、選考委員が翻訳ではないかと疑ったと書いてあったのを覚えている。男女の関係が描かれていないのが不満だとも書かれていたが、そんなもん、この作品には要らんわい。当時のヨーロッパの退廃的な雰囲気、世界最後の本当の貴族様が描かれていて、以来、私にとって佐藤亜紀は特別な作家となった。
純文学とエンターテイメントの幸福な結婚または二人羽織り的漫才 ★★★★★
「ひとつの体を共有する双子の華麗なる遍歴」とストーリーを聞いてパリの貴族の家に生まれたシャム双生児の話だと思ってたんですが違いました。でも例の浴槽ドボンまで「バルタザールの正体って実は人面瘡?」と疑ってた馬鹿な私。

この物語はメルヒオールの手記という形で幕を開けるのだが、作中に挿入されるバルタザールの反論というか突っ込みというか、それがとてもいい味出していて面白い。
メルヒオールの言い分に「そうじゃない」「誤解だ」「なんてことだ、まだあの時の事を根に持ってるのか?」と合いの手を入れるバルタザール、なんたって同じ体を共有してるからその気になればむりやり手を乗っ取って訂正を挟む事が出来る。
げに便利な二人羽織り漫才にくすっと笑ってしまう。

とても流麗で端正な文体なのだが、本書の魅力はそのエスプリとユーモアにあると思う。
兄弟がシュトルツに注ぐ意地悪な視線、女にふられてやけくそになった挙句の放蕩三昧の日々、初めて駱駝に乗ったときの公爵にあるまじきはしゃぎっぷり、金髪のエックハルトの愛すべき小悪党ぶり……
文体の格調高さにもかかわらず、それらの描写が非常にツボを得ていて小気味いい。

「ぺぺと名前までつけていたのに!」と駱駝の誘拐を本気で口惜しがるさまに噴き出さずにいられようか。いや、無理。

そんなに難しく考えなくても一度このユーモアがツボに入ればすらすら読めるので心配なし。
続編とかでないかなあ。
坂道を転がり落ちるような凋落の一途さえいっそ清清しい二人のそれからが読みたい。