過去にハマった人からの真摯なレクチャー
★★★★☆
1)「なぜ人は宗教にはハマるのか」というタイトルに対しての内容としては秀逸。特に新宗教、新新宗教の仕組みや危険性等はよく整理されているし、このあたりのことはおさえておきたい。
2)「14歳の世渡り術」として、14歳前後の人間に対して宗教をどのようにとらえ、どう共存していくのかについての示唆を与える、という点では今一歩すぎる。
理由:著者が新宗教に入信し、退会した経験からか、本の後半はともすると筆者の人生経験にのっとられ、「宗教」といえばほぼ新宗教、新新宗教を指し、その危険性がフォーカスされ、被害者的意識が至る所に感じられる。よって「宗教の危険性」を知るにはいいと思うが、14歳の人間がこれを読んで共感し、先立つ知恵として大切に意識するとは思えない。むしろ、宗教イコール新宗教、新新宗教のイメージが先にたち、嫌悪感や差別意識を生むことにもなりうる。これからの14歳に身に着けて頂きたいのはニュートラルな視点あって、宗教への嫌悪感ではない。伝統宗教や、その思想・宗教哲学を糧として生きている人間も世に多く存在している中で、どのように宗教をとらえ、適切に振舞っていくか・・という視点が弱いので、教育書的には今一歩かと。
まとめ)新宗教・新新宗教・教団がもつ危険性や仕組みを整理しアナウンスする、という意味では非常に丁寧でいい仕事をしている。
だからこそ14歳前後に向けての書物であるならば「そもそも宗教は古来から人間と切り離せないものであり(このあたりまでは1章で述べられてたのでよかったが)、なぜ人間はその起源から宗教を必要とし、宗教がなければ生きていけなかったのか、確かに問題は多々あれど、これからの時代、私たちは宗教に対してどのように考えていこうか、また宗教に対する適切な振る舞いとはなにか」等、読み手に少し考える力をつけさせるような誘導があればベストだったのではと思う。
本書には宗教にハマるキッカケや原因、ハマり方などがわかりやすく整理されているのであるから、では、どのポイントで自分自身で考えて、自分の人生に責任を持って判断していかねばならないのか、という示唆があれば、それこそ14歳の世渡り書としてベストな教育本になったと思う。
客観的なのだろうか?
★★★☆☆
著者はあくまで客観的に宗教を論じていると書くが、どうなのだろうかという疑問が残る物だった。
著者はかつて信仰をもち、後に捨てたという人である。
その著者が書いたものなので、どうしても「信仰はいつかは捨てるべき」というか「いつかは捨てた方が良い」
というような雰囲気が漂った文章だ、という印象を受けた。
ただ、特定の宗教の援助、助長、促進や圧迫という観点からは遠いという意味では客観的だが。
とは言っても、ミッションスクールを含める宗教系の学校に通っている子には勧められないかな?と思う。
何となく、自分の学校に対して不信感みたいな物を持ってしまうんじゃないかなという文章だった。
若者向け役に立つ宗教入門書
★★★★★
10代の学生が身のまわりにある宗教について考える際、はじめの一歩となる本。そういった趣旨の作品としては非常によく出来ていると思う。宗教教育をいかにすべきか、という問題がここしばらく関連業界の懸案事項になっているが、特定宗派の教えを伝えるのではない宗教の初歩的な学習として、まず求められるのは本書が示しているような知見であろう。日本における宗教の扱われ方、友達が宗教に入ってしまったときの心がけ、親が熱心な信者さんである子どもの立場、宗教系中高等学校の持つ学生への影響力(とりわけミッションスクールの感化力)、人が入信するときの主なきっかけ、信者であることのリアル、カルトの異常さと普通さ、宗教に深く関与した経験をどう生かすか、など、実に実際的な問題が取り扱われており、有益である。自分は死ぬまで「無宗教」でいる、という人でも、これくらいのことは知っておくべきである、という話が盛りだくさんで、こういう宗教本こそ幅広く読まれたらよい、と思う。