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スピリチュアリティ革命―現代霊性文化と開かれた宗教の可能性

価格: ¥3,360
カテゴリ: 単行本
ブランド: 春秋社
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スピリチュアリティ教学 ★★★★☆
現代世界のあらゆる局面において表現され、今後もさらなる発展が(著者によって)期待される「スピリチュアリティ」の諸相とその構造について、慶応大学准教授である著者が「求道者」としての立場から論じた作品。類似の仕事に、東京大学の島薗進教授が著した『スピリチュアリティの興隆』(岩波書店、2007年)があるが、本書の著者は島薗氏にはあった研究者としての節度を捨て、霊性文化をきわめて自覚的にあおることを目的としている。私的には宗教性の価値を尊び称揚する運動には大いに賛同するのだが、この種の言説に冷めた読者の心には、こうした「宣教」の言葉は響かないだろう、というのが率直な感想である。
「スピリチュアリティ」の事例として論及されるのは、セラピー文化(臨死のケア、アル中治療の民間運動など)、大衆文化(江原さん、宮崎アニメ、バカボンドなど)、そして新宗教であり、基本的には、事例の表面的な説明と、他の研究者による業績への批判的紹介から議論を組み立てている。「求道者」ならば自分の魂と身体を酷使するフィールド実践を通して得られる体験と資料から論説を組み立てて欲しいな、と皮肉を言ってみたくもなるほど他者の著述に頼りすぎだが、近年の「スピリチュアリティ」に関連しそうな現象や研究のまとめとしては、なかなか優れているように思う。
本書のハイライトは、「開かれた宗教」という規範から現代「スピリチュアリティ」文化の問題点と今後の改革可能性を論じた最終章だろう。安易なテレビ霊能者には全面的な退場を迫り、アニメやマンガの読者には、単に一時的な霊性を喚起されるだけでなく実践へと向かえとハッパをかけ、そして新宗教については、その組織構造をもっとオープンにして個人の霊性開発と他者奉仕の活動が可能な限り自由にできるようにせよ、と提言する。個々の「スピリチュアリティ」現象の物足りなさを、著者が信じる真の「スピリチュアリティ」のあり方から批判的に考察していくという、本書のもくろみが凝縮された部分であるといってよい。こういう話を関心深く読めるなら、本書は通読するに値しよう。
と、先行のレビューがあまりに共感的であったのでやや批判的なレビューをものしてみたが、しかし「宗教学」の新たなる試みとして、私的には著者の今後の展開にはとても期待したいところだ。著者も示唆しているとおり、「ポストモダン」の学術的な影響下で「宗教」を社会や言説へと還元していく流れが強まるなか、こうした愚直なまでの宗教本質主義の立場から現代世界を論じていくスタンスから何が見出されてくるのか、非常に楽しみに感じるのである。
現代霊性思想のガイド ★★★★★
著者の樫尾氏は「スピリチュアリティ」という語彙に広範な意味を持たせ、現在日本に広く浸透している霊的大衆文化(スピリチュアルブーム、ニューエイジ、ヒーリング産業、江原啓之氏、宮崎駿氏のアニメ「もののけ姫」等、龍村仁氏の映像作品「ガイアシンフォニー」など)、宗教、新宗教、スピリチュアルケア、ホスピス等の医療活動を総称して「スピリチュアリティ」と大きく捉えた上で考察を行っています。

一般に宗教学分野でこうした霊的大衆文化について深く論及する研究者が少ないので、島薗進氏以外の研究家の視点で考察された本書は大変有意義な内容として纏まっていると感じ読後も満足していますし、また再度読み直したい位にとても満足しています。

本書で特徴的な点は「現代霊性文化 = スピリチュアリティ」についての考察にウィルバー『インテグラル・スピリチュアリティ』『万物の歴史』等々の理論を使っている部分です。著者は「批判は、ウィルバー思想の前提に関わっている」と断った上で霊性文化を理論的に分析、解説する方法として利用しているとしています。インテグラル理論を使用した事で現代霊性文化の「ポジティブ」「ネガティブ」現象を精査する事が出来「スピリチュアリティ」に個人がどの様に向き合い社会はどの様なアプローチを行ってゆけば良いか著者なりの展望が示されています。

ただ、インテグラル理論を援用した結果、著者が本来伝えたいと“恐らく”思っている真摯で情緒的な霊性思想や将来展望がインテグラル思想の特徴である冷徹な理論に「還元」されてしまった様に感じてしまう部分も見られインテグラル理論を構築したウィルバーの深層にある「詩情」的な面を置き去りにしてしまっている事が少し残念な気もしました。また本書では触れられていない、形骸化した「葬式宗教」として定着している仏教については、どの様な展望があるのか伺えたらと感じました。次著でそれらの事も考察して頂ければと思います。著者が“前向き”に〈現代霊性文化〉を改革して行きたいと思う心意気はヒシヒシと感じました。

個人的に著者の「霊性文化」に対する冷静なアプローチは非常に好感を持ちます。軽率なアプローチで霊性文化を理解するのではなく情緒と冷静さを理解しているからこそ可能な論及でした。永遠哲学(ペレニアリズム)、禅、唯識、ヴェーダンタ哲学、神智学、神秘哲学、ウィルバー思想、等々の諸思想にも造詣が深い研究者・著者としてこれからも参考になる霊性文化の研究活動を続けて貰いたいと一読者として感じます。また次の作品も期待します。