21世紀にもこのような高いインテリジェンス能力を身につけ、激動の国際社会を乗り切っていかなければならない日本人に、大きな示唆を与えてくれる本である。
★★★★☆
忠臣蔵については、多くの人によって何度も新しい解釈がなされている。本書は、やや異色ではあるが、インテリジェンス能力が重視される21世紀にふさわしい新解釈の忠臣蔵と言えよう。
著者は浅野内匠頭と吉良上野介の対立の背景には、朝廷と幕府の権力闘争があったという補助線を引く。そして、尊皇の観点から、大石内蔵助たちは決起するという解釈をする。将軍を支える柳沢吉保が「忍び」を放って、内蔵助たちの動きを正確に探っているあたりの描写は圧巻である。
著者は、柳沢吉保のような優れたインテリジェンス能力をもっていた人物が、幕府の統治を行っていたため、幕府の運営はうまくいっていた仮説をとるが、本書を読むとその点には強い説得力がある。
本書を読むと当時の日本人のインテリジェンス能力が極めて高かったことが分かる。日本人は21世紀にも当時のような高いインテリジェンス能力を身につけ、激動の国際社会を乗り切っていかなければならない。その点でも、大きな示唆を与えてくれる本である。