本書を読まないと何を書いているか判らないレビュー
★★★★★
何回読み直しても解らないことがある。まるで作者に「あなただったらどうする?」と問いかけられている様。一つ解っても新しく解らない事が湧き出す。なのに四巻の冒頭、絵籐知恵のモノローグ、これを見た時にはなるほど理解出来たと思わされた。
この本の完結まで読んでも、真名が何故死んだのか、淳子がどう関わっていたのか書いてはいない。ましてや四巻が終わってから時系列的にそれより後の一巻冒頭のシーンにどう辿り着くのかそれも全く解らない。
台詞一つに、挿絵一つにどう解釈したらよいのか想像が膨らむばかり。なぜ二人が愛し合ったのか、いだく気持ちは恋とか愛とかで括ってしまってよいのか、どんな心情なら心と体を求め合いながら相手に喉を差し出せるのか。誰が何をどのように考えているのかを活字を拾いながらいちいち考えないとならない有様。
ただ、私達は彼女たちがお互いをどれだけ(好き.愛してる.必要.求める...すみません、一言で表す言葉が見つかりません)で、どんな風に愛し合ったかを知ることが出来る。扇情的で、たよう様なインモラルな雰囲気の中、なのに清楚さを芯に残した彼女たち。最後の挿絵はその表情が色々なことを教えてくれる。
「本当に」と言わなくて良いところに嘘偽りのない心が在って、きっと「君が僕を」の後には言葉ではなく行動で示すお互いの気持ちが続くのかもしれない。
数年に一度は読み返してみて、その時々に自分がどう解釈をするかが楽しみ。理解出来たと思っても次に読んだ時にはぐるりと反対の事を考えるかも知れない。そんな読み方を将来してみたい。たぶん、どう読むかを考えるというのも、作者の問いの一つではないのだろうか。