3番と聴き比べたいクーベリック流
★★★★☆
1979年11月の録音。遅めのテンポでじっくりと熟成させるような演奏である。クーベリックとバイエルン放送交響楽団(Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks)のコンビで聴くブルックナー演奏には、その背後に独特の思いや高いプライドがあるように思う。
クーベリックは、ブルックナーの「泰斗」ヨッフムの跡目をついで、このオケの特質にさらに磨きをかけてきたと言えるだろう。彼は、1961〜1979年の永き期間にわたってこのオーケストラを指揮したが、スラヴ系作曲家、ハルトマンなど20世紀の作曲家に加えて、ブルックナーやマーラーも得意の演目だった。
音楽の自然の流れを重視しそこに熱い思いを注ぎ込むクーベリックの演奏スタイルは、時にフルトヴェングラーやテンシュテットの演奏を連想させる。その一方、オーケストラの自発的な動きを尊重し最大限その良さを引き出し、さらにそこに彼独自の哀感や熱情といった表現力を見事に内在させていくことで、聴き終わるとやはりそこには「クーベリック流」としか言いようのない良き個性を感じる。4番は名演が多いがクーベリック盤はこの価格帯では3番とともに推奨に値する。3番の「駿足さ」と4番の遅めの熟成のコントラストも実に興味深い。