満州
★★★★★
ある満州観は、かつての満州には夢がありました。という風に
ついノスタルジックに捉えてしまいます。
ある満州観は満州なんてすでに過去のこととしてしまいます。
もちろん、人間である以上、
ノスタルジックな見方も、過去のものという見方もすべて大事です。
ただ、より建設的な発想として。
きちんと過去(満州)を見つめる。それによって、現在(中国東北部)が見えてくる。
そのためにはわれわれは、きちんと一つずつ検証していくしかない。
そういうことかなと感じました。
巻末の、年表・参考資料・文献・組織表なども
きめ細かく役立つこと請け合いです。
キーワードは「国策」「満鉄」
★★★★★
1906年(明治39年)満鉄が創立されて3年後、夏目漱石は満州旅行から帰った印象を綴っている(「満韓ところどころ」)「日本の開化を一足飛びに飛び越して、直に泰西の開化と同等の程度のものを移植しつつある」ようだと驚嘆している。ただ、その裏には批判精神があることは言うまでもなかろう。
創立以来40年、満州における大動脈である満鉄の歴史を、日本が抛棄して60年後あらためて見直そうとしたのが本書である。これまでかの地での体験者が懐古的に語り懐かしむことが多かったが、本書のように戦後生まれの日本史学徒の視点で論述しているのはまことに意義あることである。
(1)国策会社満鉄の誕生(満鉄創立・政党の浸透・国策会社としての使命の拡大)
(2)「国策」をめぐる相克(松岡洋右と国家改造・日本の「満洲」中国の「東北」)
(3)使命の終わりと新たな「国策」(満州事変と満鉄の転換・国策会社の凋落)
(4)国策会社満鉄と戦後日本(満鉄の終焉・満鉄の「戦後」)
以上のように、「国策」をキーワードにして日本の政治のあり方を「満鉄」を通して検証しようとしている。具体例を多く挙げながら写真も挿入し膨大な歴史を簡略に叙述している。
やがて戦後生まれの日本人ばかりになる時、日本がかの地で何を企図したのかを知る文献になろう。著者はまだまだ若い。引き揚げの苦労話を綴る世代ではない。父祖の時代の大陸政策「国策」=満州開発、その大動脈「満鉄」その他テーマをしぼった研究は今後更に進められねばならないと思う。
ややこしい。
★★★☆☆
大変な労作であるが、内容がややこしく読みにくい。何々線がどうしたとか、こうしたという話が延々と続くと気分が萎えてしまう。
はじめに菊池寛の「満鉄外史」でも読んで大体の流れをつかんでから読むとよいと思う。
菊池が徹底的に批判した原敬を、ビジョンをもった政治家として再評価するなど、興味深い点もある。