これだけでも1冊を書けてしまう満鉄調査部事件に関しては、基礎から始めて、近年中国で見つかった逮捕者の獄中手記までを50ページに詰め込んだため、入門書なのか、研究成果の解説なのかどっちつかずで物足りない感があった。
かつて満鉄の調査をしていたことがあったが、大豆の規格作り、通貨の統一、鉄道の収益調査、ロシア・華北の分析など、改めて本書を繰っていると、無政府に近かった旧満州で経済政策や国際関係で、強い実効性を持ちながら、東アジア全域を股にかけた調査活動が出来た「満鉄調査部」に魅力を感じずにはいられない。