本文庫の原本は、1965年の発行。したがって、張作霖の爆殺現場は「柳条溝」となっており、また当然、ソ連崩壊後のノモンハン戦史に関する公開史料も使われていない。それにもかかわらず、主要な歴史の流れは事細かに追跡され、例えば、上記張作霖爆殺の経過などは、誰それがどう動いたというレベルまで詳細に知ることが出来る。軍隊そのものを主として描いているので、当然、兵隊や民衆が関東軍とどのように関わったかなどは埒外におかれていて、それらを知るためには別書をひもとく必要がある。しかし、戦後60年の時点で、関東軍を知るために文庫本として再刊された意義は大きいと思われる。