もの足りない・・・
★★☆☆☆
聖書を人間的視点からとらえた本。「聖書のテクストに、絶対的な権威の
拠り所となるものはなく、聖書は絶対的な権威を読む者に要求していない」
ことを伝えようとしている。
七十人訳とヘブル語の相違や、七十人訳の成立ちに関する話など、たしかに
興味深い話もあるが、単なる揚げ足取りにすぎないような話も散見され、結局
キリスト教徒は何のために聖書を「乗っ取」ろうとしたのか、その理由が
今ひとつよくわからない。
唯一神がなぜ自らを「われわれ」と称するのかに対する掘り下げも全く不十分で、
聖書知識が豊富でない普通の日本人向けの書物だとしても、このあたりは
もう少し突っ込んだ議論をしてほしかった。
七十人訳聖書について知りたい方には、マルティン ヘンゲルの
「キリスト教聖書としての七十人訳―その前史と正典としての問題」
の方がわかりやすいように思います。