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日本の森はなぜ危機なのか―環境と経済の新林業レポート (平凡社新書)

価格: ¥1
カテゴリ: 新書
ブランド: 平凡社
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林業に対する我々の勘違いと誤解を解く ★★★★★
田中さんの本は何冊か読んだのですが、この本が読んだ中では力作だと思います。(2007の割り箸はもったいない?と、森林からのニッポン再生はまだ読んでません)
一般の人の勘違いや誤解を分かりやすく説明してくれています。そして一番ポイントは林業は成功だが、林産業の失敗だったと言う指摘だと思います。すなわち木という文脈では先進国の中でこれほど豊かな人工林にしても雑木林にしてない珍しい存在であること。問題は外材が安くて国内産の材の値段が下落したことだという一元化した視点ではなく、材の加工であったり消費者のニーズであったり非常に多元的な意味合いで川上側と川下側のすり合わせが不十分であった事なのでしょう。そして森林ボランティア的な雑木林の間伐もある意味良いことだが、ほんとうに林業というビジネスを儲かるものとしないと森の荒廃は進むと指摘。
また、種々のビジネスモデルも挙げながら今後の日本林業の有り方を模索しています。
興味深いのは焼畑や放牧としての林の利用法、そしてバイオマス的間伐材の使用でしょうか。
ほんとかな ★★☆☆☆
闇雲な森林保護の視点からの脱却を説き,
有効な利用による森林の復興を望む筆者の入魂の1冊。
林業に関連した幅広い分野を取材し,森林認証制度から造林技術まで独自の考察を述べている。

しかし,どうしても
「ほんまかいな」
と思ってしまう。
例えば,

本文中に スギは下枝が自然と落ちるので,日光が林床に差し込み易く下草が生えやすいといった記述があるが,
スギ林の林床は昼でも真っ暗やで。

という訳で,筆者の問題意識にも非常に共感する部分もあるが,その記述全般を鵜呑みにするのは危険だと思う。
考える契機にするには良い本です。

目からウロコ、誤った常識を覆す意欲作! ★★★★★
「森林」の危機は、誰もが知っていることかもしれない。
しかし、どういう危機が起きているのか、明確に認識されていることは稀である。森林には、消失と劣化、という危機があり、地球上では消失の危機、国内では劣化の危機が起きている。

著者は、国内に焦点をあて、歴史的背景を説いた上で、日本の森育成は世界で最も成功した例であるとし、現在の危機は木材を売って製品を作るノウハウ不足、間伐・下刈りなど手間暇のかかる農業発想の育林による高コスト等、「林業」の衰退が大きな要因であると論じている。

 又、近年盛んに行われる森林ボランティアは、役立つどころか、林業従事者にとってははた迷惑なものになっているという。実は、殆んど役立っていないらしいのだ。都市生活者は伐採や下刈りなどではなく、森林保護に貢献できることは他にあるはずだ、と著者は考えている。
後半では、著者の様々な森林経営の為のアイデアが列挙され、非常に参考になる。

「森林」の危機を闇雲に訴えるものではなく、森林と人とのかかわりをトータルに捉えている視点が非常に良いと思う。

森林危機に心を痛めている方や森林ボランティア等に参加している方にはとても参考になると思います。

意表を突く森林問題の好著 ★★★★☆
 あなたがもし、いささかたりとも環境問題に関心があったとしよう。日本の森林にとって何が問題かと問われてまず思い浮かべるとき、「下刈りなどの手入れをする人間が少なくなっているから森が荒れる」あるいは「木材の輸入自由化のせいで安い外材が流入し、国内の林業が立ち行かなくなっている」という有名な見解が浮かぶ方がいたら特に、本書の一読をお勧めしたい。
 一定の条件のもとで手入れなしに育成を行う林業(=コスト削減)、販売に念頭をおいた林業(外材の流入云々は単なる言い訳)という本書のトピックは極めて刺激的である。

 林業の問題は環境問題でもあるし、経済問題でもある。経済性の観点から(とはいえむき出しの市場原理主義というわけではない)林業の問題を余すところなく語った、文字通り目から鱗の好著といえる。

日本の林業の持続的開発を具体的に論じる本 ★★★★★
著者は林業を含む森林・自然環境などのテーマを専門とするフリーランスのジャーナリスト。著者のこれまでの著作(『「森を守れ」が森を殺す』など)と重なる部分が多い本書だが、記述がよく整理されているので、初めての人には本書をお勧めする。

日本の林業は「環境保護」や「国策」などの文脈で語られることが多いが、著者はそのような態度こそが日本の林業の衰退の原因なのであり、これを復活させるためには経済原理を導入する必要があると主張する。「持続的開発」といった言葉を使用する、市場原理重視論者の1人として位置付けることができる。フットワークが軽く、広範囲の取材を行っているので、林業にあまり関心がないが環境保護には関心があるという一般読者にとっては新しい発見が多いだろう。地方の「村おこし」などの活動に関わっている人も、著者の議論からいろいろな刺激を受けることができると思う。