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1997年――世界を変えた金融危機 (朝日新書 74)

価格: ¥756
カテゴリ: 新書
ブランド: 朝日新聞社
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本当に流動性の問題だったのか? ★★★★☆
当時の東アジアではタイにしても拝金主義のあやしいお寺やら、驚嘆の目で見ている西洋人達を尻目にモダンな生活を満喫する若い男性の航空会社のテレビCMやら全くいかにもバブル経済の真っ最中である様が連日報道もされていて、全くそれにむけてそのバブルを見越した投資利回り効率を求めて大量の外貨流入があったのも事実であり、国内でも大量の過剰かつルーズな信用創造が行われチェック機能を欠いた背景にはさまざまな途上国的な構造的不健全さがあったのも事実で、
であればいわば一時的に回転資金難に陥っただけの流動性の問題であって資金を更に供給してやれば自然に元に戻るようなものなのであったのかどうか、

また普通この間の事情を「経済実態が萎んで来て為替水準を維持しドルペグを続けるのが困難になったのにかかわらず、その為替の枷をかけられているから金融政策の自由を失い、景気後退すればするほど金利を引き上げなければならない矛盾に陥り、それが遂に自転車操業不能になった」と言われるのとも整合性が取れていなく、この点一体当時の経済実態の中身はどうだったのか、IMFの構造改革要求は一時的に確かに破滅的な影響を与えましたがしかしそれが全く見当外れだったのかどうか、もう一つ突込みが無くて良く分からなかったです。

しかし、だからといって決してよくあるようなドグマティックな本でも知的遊戯に堕しただけの内容でもなく、内容の多彩さからこの問題についてもこれとは別の方向からの検討も裏では必ず行われているであろう事も窺われ、そのそれぞれの議論の要点をぴたりと抑えていく良質な祖述家を得ることで、アメリカの経済学の柔軟性と敏感さとプラグマテックさと奥深さ幅広さ、更に日本のそれとの水準と質量の差に愕然とするばかりで、全くその点において必読書と言えるだろうと思います。
視界の霧が晴れた清清しさ ★★★★★
 私は、容易に決断のできない多くの事象に取り囲まれている閉塞感に苛まれていた。どうすれば個々の事象を明確に理解し、対処できるのか、と。この本はこうした問題に一つの処方箋を示してくれる。ただの歴史ものとして読んでも面白いが、それだけではつまらない。著者が紹介している経済理論は日々の生活を理解し、説明するのにとても有用だ。たとえば、ナイトの理論を知ったことで、この世の中にはそもそも判断のつかないことが原理的に存在し、その問題に取り組んでも仕方がない可能性のあることがわかった。そもそも判断できるはずのないものをいじりまわして、判断しようとしていたのである。なんと愚かだったのか。光を媒介するエーテルを探しても無駄であることが、理解できたようなものである。そうした有用な情報に満ち溢れた本である。大胆な簡略化と平易な文章で難しい理論の核心が簡単に説明されている。思うに、著者は説明の天才である。難しいことを簡単に説明することは、物事の本質を真に理解していなくてはできない。教育者として当然かもしれないが、頭の下がる思いである。
2008年10月に読むのにふさわしい一冊 ★★★★☆
宮崎哲哉が薦めていた一冊。
1997年というのは、アジア通貨危機が起こった年。これはタイから始まった。当時のタイは、経常収支の赤字を資本の流入で埋め、結果的に外貨準備が増えている状況であったが、あるきっかけで資本流出が始まり、外貨準備が払底、自国通貨を買い支えることができなくなってバーツが急落したとされている。大体他の国でも事情は同じである。ここで登場するのが「最後の貸し手」的役割のIMFなのであるが、ここでIMFがインドネシアや韓国に「おしつけた」構造改革要求が頗る評判悪く、後に各国にそっぽを向かれ、IMFは自らの国際的存在意義を低めることになった。

というのは長い前置きで、竹森がここで考察するのは、なぜこうした危機が起こるのか、というところで、フランク・ナイトの論じた「リスク」と「不確実性」の区別の議論を持ち出す。ナイトを敷衍した竹森の論考(この2章が本書の最大の読みどころ)をすごーーく単純化して言うと、世の中どうしてもコントロールできない「不確実性」の領域が必ず残されている(ただし、そんなものはないというフリードマンのような立場もある)。「不確実性」は普段表面化しないがときどき経済界に目に見える形で出てくる。このとき、人々は過度に悲観的な対応をするが、政策担当者は、逆に積極的な対応をしなくてはならない(「バジョット・ルール」)。

この見方に立つと、1997年のIMFは不確実性が露になることの意味を理解していなかったので対応を誤った。一方、2000年頃のITバブルの崩壊に対し適切な対応をしたとして、当時のFRB議長グリーンスパンは肯定的に描かれている。要するに、竹森が「世界を変えた金融危機」というのは、不確実性に対する対処法を変えた金融危機ということである。しかし、本書にも書かれている通り、その後のサブプライム問題の火種を作ったのも事実。グリーンスパンの自伝をこれから読むところだが、よい準備体操になった。
資本主義の危うさ ★★★☆☆
フランク・ナイトのリスク・不確実性の区別を軸に政治過程に踏み込み、サブプライム等過去の金融危機の原因を分析した好著。
只、「経営者は不確実性の領域に踏み込むことによって利潤を得る」という著者の説明には腑が落ちません。多くの経営者が「勝算がある(ライト流の「リスク」をとる)」と判断した際に利用した「確率分布」が、他者のそれとは違うから利潤を得るのであり、他者がその確率分布を真似ることで利潤は減少するのではないかと感じます。そして、その確率を算出した経済の構造が変化することに気付かず、同じ確率分布のまま行動し続ける結果、予想を超える(不確実な)事態に遭遇し最悪の場合、倒産することになるのではないかと思います。
そして、サブプライム問題は、
・リスクを分解し合成出来るという考え方は限定的にしか成立しないこと
・格付は過去の実績に基づくもので、未来を平均的に説明するだけということ
を「忘れ去り」、格付を妄信するという、一種思考停止状態に陥った結果起きたのではないかと思います。
住専問題について読んでください ★★★★★
日本の住専問題は農協の融資の焦げ付き問題だったものを関係者が難しくしただけで、アメリカの赤字拡大もアジアの国々が借金をしてまで設備投資しなくなった分の資金が流れただけとあったのを見てとても納得しました。
不思議なのは、大手銀行は情報が公開され、ことあるごとに社会から非難を受け、改善努力しているのに、なぜ農協は改善努力していても、あの当時から今日まで一部の専門誌で取り上げられる以外、表立った非難も、大々的な情報公開もないのだろうかと思いました。
ただ、戦争の経済学という書物は値段的にも一度読む価値があります。