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島抜け (新潮文庫)

価格: ¥460
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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遠島流刑になった罪人は、島でどのような暮らしをしていたのか ★★★★☆
天保年間、老中水野忠邦の改革によって、奢侈は厳しく禁じられ
読み本、絵表紙、講談などによる幕府への批判は厳しく禁じられた。

大坂の講釈師、瑞龍は、徳川家康が、豊臣方を攻めたとき、姦計を持って堀を埋め
茶臼山の戦いにおいて真田幸村勢に攻め立てられ、恐怖に打ち震えた事実を隠し、
堂々の戦いぶりだったと演ずる当時の講談に不満を持っていた。

瑞龍は、自ら真実の講談を書き下ろし口演、大坂中の大評判をとる。
しかしそれは、ただちに奉行所の耳に届き、特に口演のなかで、
権現様を、家康と呼び捨てにしたことが、咎められ、種子島流刑に処せられる。

これまでこうした、講談などの違反は、屹度お叱り、手鎖などの軽微な刑だったが、
天保の改革のなかにあって、公儀の逆鱗に触れ、重罪となったのである。

種子島に流された、瑞龍は仲間と島抜けを試みる。

本書で興味深いのは、流刑になった罪人が、島でどのような暮らしをしていたかの
描写である。なぜ、島民は罪人を受け入れたのか。
罪人たちはその身をどのように拘束されていたのか。
ドキドキでした ★★★☆☆
 流人を引き取った種子島の庄屋は温情を以って接したのに、瑞龍は島抜けという裏切りを、その場の思いつきでしてしまいました。丸木舟で漂流中に何度も死を覚悟して、唐土へ上陸する時原住民に殺されるんじゃないかと思った一瞬の恐怖、清国役人に偽名を使ってまでして送り届けてもらった日本の、長崎に上陸するときの役人に対する怯え、長崎奉行所が瑞龍たちの偽りの生国に身元照会することを知った時の驚愕、破獄して逃亡中の緊張、読んでいて何だか夢に出てきそうな感じがしました。
 瑞龍の遠島刑はそもそも「大坂の陣」を豊臣方に良い目に講釈したことが問題にされた、今なら全く問題にならない罪でした。読みながら、「何とか生き延びてくれ」、「ご赦免にならないか」等と、ついつい瑞龍の肩を持ってしまいました。結果的に死罪は残念に思いましたし、「あと10年くらい逃亡すれば明治維新だったのに、」と余計な思いまでしてしまいました。
 
 
主人公、諦め気味。 ★★☆☆☆
「島抜け」
流人が流刑地・種子島から脱走し、異国を経て日本にたどり着くが、島抜けとばれるのを恐れて奉行所からも脱走、捕縛されて死刑になる。
体制への反感から現政権に媚びぬ講談をして島流しを食らった講談士が、流刑地で釣りのついでに仲間と一緒にそのまま島抜けして、その後も流されるままあちこちふらふらして、腰の座らない話。

流刑以降の主人公の性格が、行動にほとんど反映されていないような。

「かけた椀」
飢饉続きで食料のなくなった村を捨てた夫婦が、食べ物を得るために海を目指すが、その途中妻は息絶える。
人肉を食ったという男が簀巻きにされ、首に石をつけられて、川に捨てられるシーンが生々しい。

「梅の刺青」
江戸時代後期から近代にかけての日本の解剖の歴史。

小石川療養所で死にかけた梅毒患者が、葬式を挙げてくれることを目当てに死体解剖を依願する話は痛ましい。
貧困のため、野辺にさらされ獣の餌になるしかない年寄り。
遊女であったため当時の習慣に従い、死んだら寺の穴に投げ込まれるはずの女。

3作の雰囲気が異なるのは、作品が出来た年の影響もあるのだろう。

「かけた椀」は昭和59年、他2作品は平成11年である。
著者の作品には一環して「何かに挑む」主人公が登場するが、著者が年経るに従って主人公の
「理不尽に抵抗する力」が削げて、流されるに似た諦念が染みてくる。