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異形の道化師―マロリオン物語〈3〉 (ハヤカワ文庫FT)

価格: ¥1,029
カテゴリ: 文庫
ブランド: 早川書房
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卓越した群像劇の舞台はいよいよマロリーへ ★★★★★
 前巻の最後でマロリー軍の捕虜となったガリオン達はマロリー皇帝ザカーズの賓客として、東の大陸のマロリーに赴くことになる。そして、帝国の首都マル・ゼスを訪れることになるのだが、前巻のマーゴのようにこれまで”敵”として描かれてきたマロリーがこれまでとは異なった貌を見せ始めるのが興味深い。猫を愛するザカーズとサディの毒蛇ジスの交流を始めとして、ザカーズ皇帝その人も冷酷な復讐者、統治者以外の顔を見せ、それに対してサディ、シルク、リセルなどがそれぞれの持ち味を発揮する。脇を固めるマロリーの国務長官ブラドーなども味わいのあるキャラクターである。
 そして、本書のタイトルともなった異形の道化師の登場とヤーブレック、ヴェラとの再会や宮廷の陰謀劇を経て、マル・ゼスを後にしたガリオン達はいよいよザンドラマスを追ってかつてのトラクの家、アシャバを訪れる。そこでガリオン達を待っていたのは思いがけない展開だった。
 とにかく、群像劇として秀逸なこの作品は、道中で出会う脇役から事件からそれに対する一行の反応に至るまで興味深く、飽きさせない。前半は思いもよらない明るい色彩から後半はやや暗い色彩を本書は帯びるが、その中でもユーモアや人の強さを感じさせてくれるのも楽しみの一つである。なにより、様々な人物との遭遇を経ていよいよ佳境に入ったガリオン達の旅がどんな展開を迎えるのか、読み終えた側から次巻が楽しみでならない。