意外とカジュアル
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表紙を見るといかにも「ちょっととっつきにくそうなマニア向けの本」という感じですが、中身は江戸時代に書かれた「人相の本(南北相法)」と「節食による開運法の本(修身録)」をまとめて現代訳にしたものです。
僕がこの本を買った目的は「節食による開運法(修身録)」を読みたかったからなのですが、思ったよりも文体がくだけた感じで、偉そうではないのが良かったです。
もちろん江戸時代に書かれた本ですから非科学的な記述なんかもありますが、それでも節食が開運につながるということを確信するのに充分な内容になっています。
「人相の本(南北相法)」もついでに読んでみたのですが、こちらは人相学の本であるにもかかわらず、なんとなく当時の常識とか作者の人柄が伝わってくる気がして、そして修身録に通じる内容もちらほら見られたりして、そっち方面に全く興味のない僕にも楽しく読めました。
これが出版された有難さにただ感涙するのみである
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この書の貴重さを的確に言う言葉は私にはないが、つたないながら説明させていただく。
本書は、南北相法と相法修身録が同時に収録されている。
相法とは、顔や身体のあらゆる形態から運命を鑑定する技術である。そして、南北相法とは、水野南北が、古来からの相法を水野海常から口伝された後、長年に渡ってひたすら実践で磨き上げ、完成させた相法である。よって、ただ学問的に修得したものとは全く違い、当時、「黙って座ればぴたりと当たる」とまで言われ、元々は牢屋敷にすら入ったチンピラであった水野南北を高名にし、鑑定料は高額でも、人々は鑑定を受けに押し寄せた。
原書は、水野南北が長い年月をかけて苦労して編纂したが、本書はそれを実に分りやすく現代訳にしており、至高の運命鑑定書となっている。おそらく、相法も含め、あらゆる運命鑑定において、これ以上の書はないと私は思う。
そして、本末に収められた「相法修身録」は、本編である南北相法以上に貴重と言って間違いないと思う。いかに南北相法でも百発百中とはいかなかったのが、その人間の食の習慣を吟味することで万に一つの外れもなくなったという。たとえ絶対的な悪相であっても、ただ食を慎むことで必ずや福寿を得、願いが叶うことを、他でもない、最悪の相を持って生まれた水野南北自ら、「悪文、独断承知の上」で語る内容は圧巻である。極論すれば、この修身録だけを読めば、相法のところは無用である(水野南北本人もそう言う)。
最も貧窮短命の運命に生まれ、実際に人の道に外れて死にかけた水野南北が、ひたすら人間を探求し、自ら長命幸福な大長者となると共に、後の世の全ての人々の幸福のために残したこの書を、全ての人に読んでもらいたいものである。