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あゝ野麦峠―ある製糸工女哀史 (角川文庫)

価格: ¥540
カテゴリ: 文庫
ブランド: 角川書店
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再評価が望まれるノンフィクションの傑作 ★★★★★
間違いなく戦後日本で最も大きな影響を与えたノンフィクション。
1968年の刊行以来、250万部超売れ、2度映画化、1度TVドラマ化され、舞台の野麦峠には碑や石像が立ち、歴史教科書に載り、関連する記念館もできた。

執筆にあたり、著者は当時の製糸業の中心地であった信州や飛騨を歩きまわり、元女工など約400人の関係者から話を聞き、明治〜昭和初期の製糸業にまつわる膨大な一次資料を収集し、結果約10年の取材を経て完成させた。日本にもノンフィクションの傑作は数あれど、ここまでの労力が凝縮された作品というのは、ちょっと他には見当たらない。

しかし影響力があまりにも広範であったがゆえに、今では本書の主題はねじ曲げられ過小評価すらされている印象がある。私の学校時代の日本史教師は本書を単に「かわいそうな女工の話」として教えたし、読み始めるまで実際それを信じていた。ちょうど「自動車絶望工場」のような進歩的な中身の本だと、読むのを敬遠させていた。

もちろん当時の女工の苦労は十分に書かれている。しかし一方で「資本家に搾取される労働者」という紋切り型の見方をすることも著者は繰り返し否定している。「従来の女工哀史にいわれるものにもいえることであるが青臭い青年的発想のセンチメンタルはかえって有害である」とまで著者は言い切っている。「ある製糸工女哀史」という副題は正直ミスリーディングな気さえする。

事実、本書では経営的な視点についても多く触れる。富岡製糸場で導入された外国製の高価な製糸設備を、信州の起業家たちはすばやく学び取り、地元の鍛冶屋などと協力し瞬く間に従来品より機能が同等かそれ以上でコストが数十分の1の日本流製糸設備をつくり上げてしまった。このイノベーションは国産製糸の輸出競争力を拡大させる一方で、深刻な労働者不足を生み出し、大量の若い女工たちが近隣の村々からかき集められ日夜働かされることになった。野麦峠での「女工哀史」は、そうした全体的な歯車の中で起こったある悲劇的な一側面であった。

著者の根本的な狙いは、「近代日本を裏から映しだす」ことにあったように思う。
鉄道、道路網などのインフラが整備され華やかさを増す都会、戦艦が続々とつくられ軍事面で頭角をあらわす日本、「表」の姿ばかり語られてきたが、その富を裏で支えた信州・飛騨を中心とする製糸業と、そこで働く人々の生活実態については十分語られていない。そこから、もう一つの日本の姿が浮かび上がらせることができるのではないか。この野心的でスケールの大きいテーマを、本書では見事に描き出すことに成功している。

そもそもの着想のユニークさ、特定の階級に寄り添わず全体を捉えるバランス思考、尋常でない取材量、エピソードの面白さ、それらが高度に混じり合って独自の近代日本像を活写しており、それが「あゝ野麦峠」のノンフィクションとしての価値を不朽のものにしていると思う。
明治という時代 ★★★★★
「まるまると太っていったのは巨大な軍艦だけであった」しめくくりの言葉は重い。
司馬遼太郎は「坂の上の雲」で、日清から日露にむかう10ヵ年、国家予算の55%が軍事費にあてられたことについて「国民生活からいえば、ほとんど飢餓予算といってよかったが、これについての不満がどういうかたちでもほとんで出なかった」と述べている。そんなはずはない。
その背後にあった庶民のくらしをみなければならない。本書は、「哀史」とはなっているが、史実を多方面から冷静に見つめているからこそ、訴えてくるものは大きい。富国強兵の明治を知る貴重な一冊です。
コウボウ様・・・・? ★★★★★
取材しに行った先で元女工のお婆さん達から作者が貴方は「コウボウ様!!」と呼ばれて、お布施をポケットにねじ込まれる事もあったとか・・・・

本文だけでなく後書きも要注意な一冊です。
書評者A殿、お宅こそ棒読みしないで本書からの真意を得たら? ★★★☆☆
近代日本経済史は岡谷製糸業を抜きには語れないはず。しかし、現代日本史教科書では我が国伝統の隠蔽・歪曲(中国・韓国侵略の隠蔽歪曲だけでない点が重要)で民間の業績(中山社)を官業(富岡製糸)が横取りした記述が記述されている。戦艦大和やゼロ戦を作る材料も技術も金も全部製糸からのキャッシュフローから出ていた事は重要。つまり、日本には製糸業以外に国際競争力のある産業は無かったと言う事。技術の点から言うと戦後経済復興のために民需利用された旧帝国の軍事技術も全部製糸からのキャッシュフローから出ていたと言うこと。つまり、岡谷製糸業は現在の日本経済にも多大な貢献をしていて、良く言われる日本は戦後何も無い焼け野原からゼロから復興したと言うのはウソだと言う事。工女も哀史であったと言う点も疑問、ほとんどの女工は「岡谷へ行って良かった。」と言っている。また、起業家には失敗は付きもので有り、リスクを取らないとリターンは無いのは常識。(製糸で失敗しても戦後別の産業で立ち直っている起業家は多く、完全に没落して一般大衆の妬み心を満たす事は少ない。)
下の書評者は本当にこの本を読んだのだろうか? ★★★★★
著者は「興亡・岡谷製糸」で、当時の製糸業界の競争がいかに厳しいものだっ
たかを一章を割いて書いている。著者によると、多くの企業は、昭和に入って
から、倒産、解散、没落で次々と姿を消してしまったということである。この
章の最後の「栄光とこの悲惨 今にして思えば工女も哀史であったが、この製
糸経営者もまた哀史でなかったはずはない。それではいったいだれがもうけた
のか?…まるまると太っていったのは、巨大な軍艦だけだった。」という記述
には考えさせられるものがあった。

本書は、上記の点を含め、当時の状況について丹念に調べているので、経済
史、経済発展、戦前の歴史などに興味がある人におすすめです。続巻が絶版な
のが残念。