引き返せない道を走る、過激な男たちの物語。
★★★★☆
ファンならご存知、過激な浮浪者”スキンク”が私たちの前に姿を現して、もう10年以上。
少しばかりお年を召したかと思ったら、その破天荒ぶりは昔のままです。
今回はビョーキの若者も加わって、なんの抵抗もできず命絶えてゆく生き物たちとその棲家を、無神経な開発業者のブルドーザーから救うことはできるのか?
手つかずの、でも「死にそうな」自然を守りたい一心の(でも狂った)登場人物たちが活躍する”スキンク”シリーズ第4昨です。
もしもあなたが窓から見える高層ビルや、最近姿を見せなくなった野生の小鳥や虫たちに胸を痛める方なら、きっと笑いの奥に包まれた悲しみに気づくことでしょう。
自然豊かな土地に住んでいらっしゃる方なら、かけがえのないもの、守るべきものを見つけることでしょう。
お子さんがいらっしゃる方なら、いつか読ませてあげたいと思うことでしょう。
やむにやまれぬ激情に突き動かされ、ただ”生命”を守ろうとする愛すべき男たち(と女たち)が展開する、笑いとせつなさいっぱいの物語です。
どうぞご一読を。
【☆5つ】じゃないのは、作者単独デヴュー作「殺意のシーズン」で見られた、生命への一途な思いに対するリスペクトです。
筆者の頭の中身が見てみたい
★★★★★
この本を読み終わってすぐ、車の窓からタバコを投げ捨てる人を目撃し、思わず追いかけそうになりました。カール・ハイアセンは本当に天才です。
筆者の頭の中身が見てみたい。
環境保護小説でありながら、悪漢小説(ピカレスクロマン)でもある馬鹿な本。
車の窓からゴミを投げ捨てる人に怒り、常軌を逸した行動に出る主人公が、島に橋を架けるという公共事業を巡る争いに巻き込まれる。
毎度のことながら、登場人物が一人残らず狂っていて、話がメチャクチャに。
にもかかわらず、ラストはすかっと爽快(引く人も多そうだが)に終わります。
もちろん、ハイアセンファンにはおなじみの彼も登場。例によっていい味出してます。
スラップスティック
★★★★☆
久しぶりに読んだアメリカのドタバタ小説。
これでもか、のぶっ飛んだ登場人物のオンパレード。
大枠はシンプル・ストーリーながら爆笑お馬鹿エピソードがてんこ盛り。
強欲で辣腕なんだけどお茶目で間抜けなところもあるロビイストと、過激を通り越して大儀のためには犯罪も辞さない大金持ちぷっつんエコロジストの対決を軸にお話しは進みます。言葉が通じない外国人NBA選手との結婚を皮切りにずっと男運が悪いがチャーミングなロビイストの奥方。バービー人形大好きの変態開発業者。謎の世捨て人…だけど前知事(ハイアセン小説の常連キャラだとか)。
懐かしのトニー・ケンリック(それも初期)をさらに掘り下げて、質量を50%アップした感じ?
個人的に気に入ったのは、警察への「助けてー!」救急電話録音集を愛聴する殺し屋さんのエピソード。彼のパートのオチは笑えること請け合い。