憲法、天皇制を今考えるためにも今読みたい
★★★★☆
太平洋戦争敗戦の翌年、昭和21年の日記。敗戦の昭和20年を記した「戦中派不戦日記」に続く部分です。大学は再開するけれど食糧難、買出しの毎日の中に、だんだんと「作家」としての意識が傾いていく様子も描かれています。相変わらず読書量の多さ、短いが鋭い評も読ませてくれます。各所に「箴言」のような言葉がみられるのは、このような不安定なあるいは激変の時には、人は、特に賢い人は、このような言葉をつむぎださないではいられないのかもしれません。ここにも「忍法帳シリーズ」「明治伝奇物シリーズ」を書いた作者の背景がにじみ出ているようです。
変わっていく輿論、知識人の言動、それらに対する憤りがあちこちに噴出しています。天皇をどう考えたらよいのかについても何度も書かれています。憲法や天皇家の問題が今また浮上しているこの時期、もう一度現在の憲法、天皇制が始まった昭和21年の体験期を読んでみても良いのではないでしょうか。