筆者は目次を見て、日本の主な霊場を歩いたエッセイと思ったが、読むほどに推理小説のような楽しみがあり、そのうちに意外な結論が見えてきた。巧みな構成と筆力により、筆者の意図はほぼ成功したと思う。
読者は平泉藤原氏のミイラの謎を各地の霊場を歩いて考え、最後に平泉を再訪して平安時代末の聖人祖師信仰の興隆と奥州の覇者清衡というキーワードにより謎を解く。多くの歴史や宗教に興味を持つ読者に勧めたい。この本を携えて霊場を歩くと面白いこと請け合いである。