時空をも超える愛
★★★★★
地球の創世から遠い未来までの物語。ストーリーが動き出すのは奈良時代…主人公土麻呂(ある事をきっかけに、不老不死となる)は、愛するさなめ(大仏建立の際、その魂となるために灼熱の銅に溶かし込まれた)の生まれ変わりと、彼女が絶命寸前に発した“謎の言葉”の意味を、時を超えて探し求めます。やや地味で淡々と進行しますが、傑出した内容とオリジナリティがあります。結末も、読者の予想を完全に上回る。人気の面では苦戦し長らく絶版だったこともありますが、豪華愛蔵版が編まれたこともあります。好きになった人には熱烈に愛される…そんなタイプの作品だと思います。なお、「イアラ」本編の他、短編が3本収録されています。
楳図先生を国宝に
★★★★★
大大大大大傑作!!!!!
大大大好きな火の鳥・復活編と同じくらいか、それ以上の圧倒的読書体験。めくるめく愛の物語。
それもたった一冊。たった一冊でこれだけ壮大なスケール。正直火の鳥より凄いんじゃないかな。
楳図先生を「まことちゃん」とかホラーの人でしょ?と言う人達全員に、「イアラ」をプレゼントしてあげたい。
たった600円ぐらいだし。安い!
何億回生まれ変わっても楳図先生にはたどり着けないっす。
楳図かずおの、多次元世界
★★★★☆
悠久の時間(とき)の流れと、変転の中で、永遠を
追い求める男女の愛と運命。
一昔前、手塚治虫や石森章太郎らが、こういう神の視点で
人間の悲しさ、せつなさ、命のはかなさを描いた時期がありました
が、この楳図作品を読んで、そんな時代を思い起こし、懐かしさを
覚えました。
イアラには、短編シリーズがあるようですので、続けて読みたいと
思います。楳図先生の、恐怖やスプラッターとは違う、別の世界をも
描ける方なんですね、ということを再認識させられる、読んでいて
没頭できる佳作です。
永久の叫び
★★★★☆
古代、悲恋の死を遂げたさなめ。死の直前、さなめの絶叫したイアラという言葉の意味を求めて、時空を超えさなめを追う男。交わることのない二人。そして、人類最後の時…。追憶の旅中、男が出会う偉人たちの思想、人間の生き様が作者ののたる絵によって色濃く描かれている。勝手な欲を言えば、もっと様々な時代における男のさなめ探しを見てみたかった。最後のシーンは同時代に作られた人類滅亡を描いた映画を思い出してしまったが、それだけ地球規模で地球環境問題や未来への不透明さが叫ばれた時代背景が反映された作品だと言えるのかもしれないと思った。
時代を超えてつながることの心地よさ
★★★★★
読んでいて手塚治の『火の鳥』が何度か頭をよぎった。読み終えてから『火の鳥』と同時期に描かれたと知って驚いた。これも何かのシンクロにシティ? 人と人、あるいは出来事と出来事がつながることに、私たちはある種の安心感を得ているのではないだろうか。それが時代を超えてなら、なおさら私たちに与えるものも大きいのだろう。だからこそ、こうした物語は作者を変え、時代を変え、描かれていくのでは。
古くは平安の時代から昭和の「現代」まで、『火の鳥』とは異なり、ひたすら時系列にそって語られる壮大でかつ無駄の無い物語に、人間の愚かさや強かさを知らされるのは言うまでも無く、最後の最後では読者自身をまざまざと見せつけられることになる。天晴。