楳図先生の短編作劇法
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「従来は、劇画であれ小説であれ、短編では、人間の一生を決定づける一断面を切り取って描き、長編では人間の全人生を描いているようだ。 私は、どちらも人間を描くことに変わりはないと考えているので、創作にあたって、特に短長編の意識はしない。 ただ私は、次の一点にだけは必ず留意している。 短編で断片を描くには描くが、その一方で、長編の味わい、つまり短編でありながらも全体を俯瞰できるような配慮を、いつもとってきたつもりである」と楳図先生は短編の作劇法を語っています(ビッグコミックオリジナルにて)。この続きが、「内なる仮面」のレビューで引用したインタビューです。
これらのインタビューから、楳図先生の作品が短編でありながらも長編のような読み応えがある理由がよく理解できます。表題作「愛の奇蹟」や、パーフェクション「蟲たちの家」にも収録された「きずな」とかまさにそんな感じの人生を描いた傑作だと思います。