面白いが読後感が悪い
★★★☆☆
著者はノスタルジックホラーの大家で、期待して読みましたが、
今回の作品はとても後味が悪かったです。
「死体写真師」は、職業としてあっても不思議ではないと思い
ます。でも結末はとても怖ろしかった。「レイニー・エレーン」
は渋谷という場所も東電OL殺人事件がモチーフになっている
のはすぐわかりました。また、「私はフランセス」も同様、
結末は想像していたが怖かった。
朱川さんの描く世界は、時に倒錯した愛や性の世界です。そんな
中、仄かな愛を感じたのは「アタシの、いちばん、ほしいもの」
です。この作品だけには、確かな愛とユーモアが感じられました。
普通ではない愛の物語
★★★★☆
5つの短編が収められており、何れも作者の得意とするモダンホラーであるが、大人の愛を描いた作品が多い点が今まで読んだ作品と一味異なる感じがした。そこに描かれた愛情は、通常の男女の愛の形とは異なる形を取っており、読者は背筋が少し寒くなる思いを味わうことになる。
中には先が読める作品もあるが、冒頭の「死体写真師」の思いもかけない展開、「アタシの、いちばん、ほしいもの」や「私はフランセス」の最後の落ちは、なかなか鋭い切れ味がありました。
優しくて幻想的な短編集。
★★★★★
最後まで一気に読みました。
この本の世界にどっぷり浸かりました。
まだ余韻が残っています。
もしかすると、純粋に涙してしまった「花まんま」よりも印象に残ったかもしれません。
5編に共通したテーマはなく、どれも独立した話なのですが
怖かったり、悲しかったりする話でも何故か心が暖かくなりました。
それは作者が、どの登場人物にも愛情を注いでいるからでしょう。
殺人者であっても、虐待されている子どもであってもそれは同じです。
誰だって好きでその境遇に陥ったわけではないですよね。
作者は、その切なさを感じ取った上で物語を展開させています。
上っ面だけを文字にしているのではないのが伝わってくるので、
私の心にこんなに響いてきたのだと思います。
どの作品も途中まではある程度予想通りなのですが、
やっぱりラストはひとひねりあって、やられた!と言う感じです。
そしてどれも現実には有り得ない話なのですが、
もしかするとこれは本当の事かもと思わせる、
作者の筆のうまさに脱帽です。
愛ある作品集
★★★☆☆
朱川さんの作品を初めて読みました。
ミステリーの方だと思っていたのですが
ホラー系が主流の方なのですね。
どちらかといえばホラーは苦手なのですが
この作品は短編集ということもあり
どうにか読むことができました。
そこにはアブノーマルながらも「愛」が
感じられるからかもしれません。
妖しく美しいホラー集
★★★★☆
朱川さんといえば“ノスタルジックホラー”の名手ですが、
今回のはちょっと違う!
妖しく美しい中に哀しみを帯びたホラーとでも言うべき作品集です。
どの話も心で愛するのにとどまらず、
一個の肉として繋がりたいと切望する悲しみを感じます。
死体とセックス、愛する人の為に腕を切り落とす・・・
こんな愛し方は一見グロテスクで、
他人にはなかなか理解できないものだけど、
本来、愛なんてものは美しいものではなくて、
見栄やプライドをかなぐり捨ててしまえば
どんな愛もグロいものなのではないでしょうか?
いわゆる霊現象の殆んどは
この世に未練や怒りといった感情を残して
死んでしまった人が現れる現象だけど、
それをこんなに美しく描く朱川さんの手腕はやっぱり凄い!!
どっちかといえばノスタルジックなものが好きだけど、
こういう朱川さんもいいですね。