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祈祷師の娘 (福音館創作童話シリーズ)

価格: ¥1,470
カテゴリ: 単行本
ブランド: 福音館書店
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成長するとは自分を変えることではなく、本当の自分を知ること ★★★★☆
 主人公は、中学一年生のはる(春永)ちゃん。はるちゃんのお母さんである春子さんは8年前にいなくなってしまった。記憶の中のお母さんには顔がない。はるちゃんは、祈祷師のおとうさんとおかあさんと和花ちゃんの四人で暮らしている。家族関係がやや複雑だ。
・おとうさんとおかあさんは、実の兄妹。本当の夫婦ではない。
・四歳年上の和花ちゃんは、おかあさんの実の娘だが、おとうさんとは血の繋がりがない。
・はるちゃんは、お母さんである春子さんの連れ子だから、おとうさんともおかあさんとも和花ちゃんとも、つまり、家族の誰とも血の繋がりがない。

 はるちゃんの一家は、農業を本業としているが、祈祷師という家業をおばあちゃんから受け継いでいる。はるちゃんは、おとうさんと一緒に毎朝辛い水行をしている。祈祷師のおとうさんにもおかあさんにも、そして、和花ちゃんにも祈祷師としての力が与えられている。見えないものが見えたり、お祓いやお清めができる。家族の中で、自分だけが何の力も与えられていないことを自分が一番よく知っているからだ。
 キャベツを段ボール箱に詰める手伝いをしたり、金魚の世話や食事のあとの茶碗を片付けたり・・・家族の役に立つことを一生懸命に行っている。家族の中での疎外感を克服するためだ。しかし、その疎外感は、はるちゃんだけが感じている。そんなはるちゃんの初恋、友情、そして、家族愛の物語。
 学校では幼馴染の久美ちゃんばかりが目立つ。せっかく好きになった山中君も久美ちゃんのもとに・・・。特別な力もなく、取り立てて美しくもない主人公はるちゃんだが、ひたむきで、純粋で、人を妬んだり、疑ったりしないはるちゃんのことを応援したい気持ちで、最後まで一気に読み進んだ一冊。
 見えないものが見えるおとうさんやおかあさん、和花ちゃんは、たまたま祈祷師を生業としているから人間を超えた力があってもいい。でも、近所に住む小学生のひかるちゃんは、見えないものが見えるというだけで友達からは「ばけもの」扱いされ、両親からも受け入れられない。見えないものが見える力を得たいと思っているはるちゃんだけが、見えないものが見えるひかるちゃんの存在をそのまま受け止めることができる。ひかるちゃんの存在を人前で堂々と肯定したその時から、はるちゃんに転機が訪れる。
 成長するとは自分を変えることではなく、本当の自分を知ること。中学一年生のはるちゃん(春永)の自己肯定の物語。不思議な触感で描かれた物語、作者である中脇初枝さんのことも応援したくなった。

自分の居場所を探す少女の物語 ★★★☆☆
自分には何もする力がない、イコール自分の居場所がない…

主人公の少女、春永の悩みがそれでした。
祈祷師の家に生まれた春永には血のつながった家族がいませんでした。
おとうさん、おかあさん、4つ年上の和花ちゃんも、
春永とは血のつながりがない。春永自身のお母さんはもう小さい頃に
家を出てしまって、顔も知らないのです。
祈祷師であるおかあさんの血を受け継いでいないということは、
春永にとっては、祈祷師としての力を受け継いでいないことと同義。
他のものはみなそれらしき力があるのに、自分だけがない。
自分だけがこの家族のなかで浮いてしまっている…

思春期特有の悩み、ともいえるものですが、
この少女の場合、祈祷師の家という特殊な環境にいたことに寄るものです。
その孤独感、どうにかして役に立ちたいという願い、等などを
学校の友達関係、家族との関係を通して、生き生きと描き出しています。

最後に春永が得た結論は、思わずホッとするような、気持ちが暖かくなるようなものでした。

主人公の気持ちが自然と伝わってくるようないい文章でした。
挿し絵の版画もいい味だしてます。