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維新風雲回顧録---最後の志士が語る (河出文庫)

価格: ¥840
カテゴリ: 文庫
ブランド: 河出書房新社
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幕末無名志士の真摯な生き方と無念な死に様を教えられる好著。 ★★★★★

土佐出身ながら、高杉晋作、伊藤俊輔(博文)ら長州藩士と昵懇だった田中光顕は、昭和初年に『維新風雲回顧録』を上梓したとき、既に齢八十五歳だった。その記憶が紡ぐ六十年以上も昔の思い出話が鮮明な点に驚かされる。

自ら「多くの先輩諸氏の驥尾に付して、風雲の間を徂徠した」だけで、「いたずらに、馬齢を重ねつつあることは、まことに慚愧にたえない」と慨嘆する。謙虚な人柄なのか、多くの有為の人材が非業に倒れた維新回天の修羅場を掻い潜った者の諦念なのか。

高杉晋作に師事し、その教えを信奉する切っ掛けとなった銘藤原貞安の名刀を巡る挿話が面白い。「平生はむろん、死地に入り難局に処しても、困ったという一言だけは断じていうなかれ」という師の言葉を、九十七歳で没するまで貫き通したらしい。

天忠組大和挙兵で敗死した叔父那須信吾とその同志吉村寅太郎の馘を、維新後、洛西の竹藪の中に執念で見つけ出す挿話には鬼神迫るものがある。また、山陰遊説中に村民から強盗と間違われた四人の同志が悲劇的最期を迎える挿話からは、勤王の大義に生命を賭けた若侍たちの純真さと無念さを同時に垣間見ることができる。

新政府の要職に就いた志士の生き残りとして、志半ばで落命した無名の志士たちの事績を後世に伝え残さんとした田中光顕の忸怩たる胸中が忖度される。大河ドラマ「龍馬伝」の歴史探訪コーナーで紹介されていたが、土佐勤王党指導者の武市瑞山(半平太)の刑死後、未亡人の暮らしが成り立つように助力を惜しまなかったそうだ。

巻頭で司馬遼太郎が「典型的な二流志士」と断じた田中光顕だが、その人生を二流に生きたかどうか俄かには判じ得ない気がした。