としての建築』と『内省と遡行』)をまとめたものである、と一応は言えるの
だが、文体が歴然と異なっている。ダイエット食品の使用前と使用後、といっ
た感じである。すべては、ぎりぎりまで削ぎ落とされている、という印象を与
える。思考に速度があり、絶えず最短距離を踏破しているのだ。これは別物、
である。帯の最後にある通りだ、「この度、初めて存在するに至った著作であ
る。」と。
著者は一体何を使用したのであろうか?
この著作集の第3巻として出版される『トランスクリティーク』であろうとい
うのが私の推測なのであるが、それはまあどうでも良い。最後の第三部は
2001年10月初版の『トランスクリティーク』とオーバーラップしているのみ
ならず、ところどころ追い越しさえしている。そして、この傾向は第一部と第
二部にもまた言えるのだ。『トランスクリティーク』の認識を得て、20年前
の試みはそのポジションを明確にし、さらにはその認識を踏み越えていく、新
たな助走路と化している。