本書は著者自身が初めて本を書いたと言わせしめる代表作であり、
必読書である。著者はこう呼ぶのを嫌うだろうが、ここに「希望」が
存在する。
その為に著者はカントとマルクスの批判=吟味に沿って、
丁寧にキャピタリズム/市民社会=ステイト=ネーションの
三位一体からの脱却を見て行く。
マルクスを読み込み過ぎているきらいはあるものの、
その理論的支柱は揺るぎ無い。
マルクスの言葉通り、未来について語る者は反動的である、
と言う実践に基づいて、安易な未来像は提示されず、
最終章でただそのヒントのみが語られてゆく。
最後にジジェクの寸評をもってこのレヴューを終わろう。
《この恐るべき『トランスクリティーク』は、(中略)・・・
現代の資本の帝国への対抗哲学的・政治的基礎を鋳直す最も独創的な
試みの一つであり、(中略)・・・資本主義への「文化的」抵抗という
袋小路を打ち破りマルクスの経済学批判のアクチュアリティを
改めて主張しようとする全ての人にとって、必読書である。》
晩年のドゥルーズも「私は完全にマルクス主義者です」と言っていた。