禅語録として、今なおその思索と哲学を味える立派な思索集との、評判の主要論集だ。禅師のレベルが世界的な事は想像されるが、今以て、その同じ悟りを理解したとは到底言い難い。寺田透先生や増谷文雄先生の、立派な現代文訳と懇切な解説があるも、字が不明なのではなく、文が謎なのではない。しかし、禅師が一番の核心として居た「座る事」（座禅）の体験が、小生には、全く無いのである。こんな状況の投稿者に、分かる訳が無いと云うのが正直な自己認識だ。禅は、一種の体験・経験を旨とする為、文字からの理解には限界が在ると云うのが結論である。
不立文字の考え方も、文字から悟りを得るので無く、座ることの中に悟りを発見することの重要さを説く。禅師の学説を言い繕い、踏襲する事は、初めから禅ではないのであろう。「常に座り己の心を中空に遊ばせよ！其処から自ずと道は開かれるであろう」、道元禅師は、その様に公案を示すに違いないが。
日々アクセクと、生き、消耗した精神の一日が終わると、心自体が疲れ果てて内省の洞察まで見失うのも事実である。夢は、一年間ひたすら座禅に注ぎ込む事である。永平寺は、その様なくたびれた初心者を、受け入れる事があるのだろうか？そういう時間がいつ訪れるのだろう？死ぬまでには、そういう時間を持ちたいと願う。その後ならば、禅師の公案も心の中で生きて来るであろう。其処には、様々の思索の中で「有時」「谿声山色」「現成公案」「仏性」と興味深い論考が多々ある。

道元禅師が記した哲学書です。巻10までは非常に難解、それ以降はところどころわかるという感じでした。でも本書の真髄は巻10までにあると思って繰り返し読んでいます。座禅のみを説き経典を一切持ち帰らなかった道元禅師は、まさに本来無神教である仏教の極意を伝えているという気がします。

日本にこんなにすばらしい人がいたのだと感じた。ほとんど理解できないことばかりだったけど、道元から伝わってくる生きることへの覚悟に感動した。特に「行持」には泣いた。