様々な社会批判や風刺が込められた傑作
★★★★★
子供向けのファンタジーだと勝手に思い込み、未読のままでいたのだが、
これは完全に大人向けの童話であり、様々な社会批判や風刺が込められた傑作である。
本書の解釈の仕方については多数の本やサイトで色々書かれているので、ここではあまり触れないでおくが、
やはり執筆された第二次大戦当時の社会情勢の影響が強いと思われる。
本書を読むことになったきっかけは、箱根の「星の王子さまミュージアム」に行って興味を持ったからなのだが、
やはり読んでからミュージアムへ行くことを強く勧めます。
淡々とした語り口も気持ちのよい新訳
★★★★☆
砂漠で遭難した飛行機乗りと小さな星から地球にやってきた王子さまの出会い。悲しみややさしさを包み込んだような言葉は、幾つになっても心に残るものを与えてくれる。キツネに教わる「大切なものは、目に見えない」という言葉など、心に残る言葉がこの本にはたくさんある。良く知られているサン=テグジュペリの作品の、新訳の一つ(原作の日本での著作権保護期間が2005年に満了し、いくつかの新訳が続けて出ている)である。
この新訳では、表紙はこの「新訳文庫シリーズ」に共通する(しかし、内容も少しイメージする)新しいデザインになっているが、原版の挿絵もちゃんと著者の原版からカラーで用いられているので、しょうしょう小型ではあるが、原作の雰囲気は保たれていると思う。あとがきに訳者が「記録に残されている、作者の太くやわらかく、楽しげであったかい声で朗読すべき本であること」を目指して訳したと書いている、淡々とした語り口の文章も、気持ちがいい。
翻訳、ということについて感じたことを一つ。上にも挙げたキツネとの出会いはとても重要な部分の一つである。ここに「自分がなつかせた相手に対して、きみはいつまでも責任がある。きみはきみのバラに責任があるんだよ・・」という言葉があるが、この「なつく」というのがどういうことなのか、と考えたりして、多分翻訳者も苦労をしたところではなかったろうか、とちょっと他の翻訳も調べてみたくなった。よい作品であるからこそ、自分の感じた通りの言葉に翻訳したい、との思いも強いだろう。こういったことが多くの新訳を生んだのだと思う。良い作品、深い作品ならでは、である。
どの訳であれ、この作品の伝えたい「大事なもの」は変わらない。しかし、違った訳で読んでみて、違ったところに気付くこともあるかもしれない。短い作品である。何度でも読んで欲しい。
ちいさな現代の「教典」
★★★★★
本書112頁の大切なものは目には見えない、
など静かな文句が読者をはっとさせるでしょう。
いわゆる近代合理主義思想によって、人間は知恵をフル回転させ、
科学技術を次々と発展させています。
これで人間は物質的に豊かな生活を送れるようになりました。
その一方で孤独化も同時に起きてしまいました。
お金だけを稼ぐだけの人生、他者に命令するだけの人生。
人間にそれぞれの役目だけをさせることは効率的ですが、
どこかむなしいです。
「合理的」ということの表と裏について考えさせていただけました。