とりあえず、ポール・マッカートニーを称えなくてはならないだろう。彼は強い信念に基づき、勇気ある行動に出た――そして、壮大な失敗に終わるかもしれないというリスクを冒して信念を追い求めたのだから、まさに英雄的な資質の持ち主と言える。これと似たケースは、中途半端な出来に終わった1967年のビートルズのテレビ映画『Magical Mystery Tour』だ。あの作品は、ポールのうぬぼれを如実に物語っていた。
17年後、ソロ・アーティストとして映画館にお客を呼べるだけの人気を得たと判断したポールは、この奇妙なミステリー映画を作り上げた。ストーリーは、ポールの新作ソロ・アルバムのマスター・テープが盗まれ、それを見つけようと騒動が巻き起こるというもの。批評家からほとんど相手にされなかった映画だと言えば、あとは推して知るべしだろう。
社交辞令的な言い方をすれば、このアルバムは映画本編ほどひどい出来ではない。それにしても、なぜポールはこんな出来の悪い映画のために珠玉のビートルズ・ナンバーを再録音し、まるっきり気の抜けたソロ・ナンバーと一緒に並べたりしたのか? その疑問はやはり残る。しかし、プロジェクト自体は問題だらけだったかもしれないが、演奏は一貫して素晴らしいのである。
オール・スター編成のバンドには、かつてのバンド仲間であるリンゴが参加。デイヴ・エドモンズ、デイヴ・ギルモア、クリス・スペディングが交代でギターを担当するほか、ジョージ・マーティン、スティーヴ・ルカサー、ジェフ・ポーカロ、ジョン・ポール・ジョーンズも登場。ポールの「何考えとるんじゃあ?!」路線の最右翼と言えるアルバムだ。(Jerry McCulley, Amazon.com)
評論筋の評価はかなり低いが傑作だと思う
★★★★★
1984年、同名の映画のサウンドトラックとして発売されている。
映画自体は、正直言って駄作というか、もうどうでも良い感じ。
が、サウンドトラックとしてではなく、Paulのアルバムとしてはかなり良い
出来だと思う。
発売当時はBeatlesのカヴァーを筆頭として酷評を受けていたが、個人的には
このアルバムに収録されているカヴァーのアレンジはかなりお気に入り。
特にこのアルバムの3年前にリリースされた「Tag of War」からリテイクされた
「Wanderlust」と「Ballroom Dancing」は良いアレンジだと思う。
数少ない新曲でありメインテーマでもある、「No More Lonely Nights」はPau
lのバラードの中でも出色の出来だろう。
Beatlesナンバーのセルフカヴァーにしても「The Long and Winding Road」以外
は良い感じだと思う。
「No More Lonely Nights」が入ったリアレンジベスト盤と思って楽しむのが
良いと思う。取っ付き易さではPaulのアルバムの中ではトップクラスに入るだろう。
リマスターされてエクストラトラックが収録された米盤をお薦めしたい。
いいのは新曲
★★★★☆
ビートルズの作品を再演するということで当時は話題沸騰だった。
しかし、いいのは新曲であり、もったいないことだとおもう。タッグオブウォーの制作直後、パイプスオピースの制作を中断して制作したアルバムである、わるいわけがない。個人的にはノーモアーロンリーナイト(プレイアウト編)とノーヴァリュース、ソーバッドがベスト、ソーバッドは『パイプスオブピース』におさめられているバージョンより数等いい。ボールルームダンシングもタッグオブウォーバージョンより好き。
ビートルズの再演はぱっとしないがヒアゼアアンドエヴィリウエアはまずます。ザロングアンドワインディングロードは映画のサントラとしては貢献しているが、単独の音楽作品としては最悪のアレンジ。
名曲ぞろい
★★★★☆
ビートルズナンバーとソロの名曲、さらには、ポールらしいバラード曲の「ノー・モア・ロンリーナイト」と非常に名曲ぞろい。その上、「SGT.Peppers ・・・」ばりにリプライズまで入れる気合の入れよう。アルバム自体は非常に聞きやすかったのですが、評価が低かったのは映画の出来と新鮮味がなかったからかな?ビートルズの曲をレコーディングしたということはポールの曲作りのアイディアが尽きたと見られ、その後の低迷につながったのかもしれません。しかし、もう一度いいます。曲自体は名曲ぞろいです。
意外と聴けるよ
★★★★☆
お世辞にも成功したとは言い難い結果しか残せなかった同名映画のサントラ盤で、リリースは1984年。全米21位/全英1位と映画本編とは比べ物にならないほどの成功を収めています。ビートルズやウイングスの作品を再録し、当然新曲も用意したりと非常に気合の入った内容ですが、それだけに映画の出来には閉口ものでした。しかし大物揃いのスーパーバンドの演奏シーンだけは一見の価値はあるでしょう。それだけ!
ところで本作は再録曲と新曲の混合構成となっており、聴く人によっては「中途半端」か「豪華」か評価が割れるそうです。音楽誌では否定的な評価を下される事が多いアルバムですが、皆さんは評論家の能書きなどに惑わされず、シッカリと聴いてみてください。意外と聴けるアルバムです。
当時「ビートルズを再録」だけがクローズアップされていましたが、本作中最高の楽曲は必殺バラードのTr.1でしょう。全米6位/全英2位と大ヒットした曲で、21世紀となった現在でも全く以って色褪せる事の無い名曲と呼べます。
そしてもう一曲、注目すべきはTr.16。ビートルズのアメリカでの最後のNo.1シングル曲として有名な作品ですが、当時フィル・スペクターのアレンジにポールが不満を露にした事でも知られている作品でもあります。ポールは今回の再録音に際して本来意図していたと思われる「シンプル」なアレンジを採用しました。という事は、このVer.は「新」ではなく「真」Ver.という事になります。どちらが素晴らしいかは意見が分かれるところでしょうが、「聴く比べ」る楽しさがあるのは間違いなし。必聴です。ちなみにウイングス時代のライヴでもかなりシンプル志向の強いアレンジで本曲を演奏していましたが、1989年以降のライヴではフィル・スペクターに近いアレンジで演奏していました。結局ポール本人はどちらを気に入っていたのか?やや不可解です。
他の楽曲については再録曲・新曲ともに「及第点」前後の出来ではないでしょうか。…これが私の率直な感想です。恐らくは本人もそれを認識していたのか、途中SEを入れたりメドレーにしたりと苦労の跡が垣間見えます。そのおかげか、ドライブのBGMにはピッタリのアルバムとなっています。皆さん、ぜひ映画の事は気にせずに本作を聴いてみてください。
ポールの代表作を別バージョンで楽しめるサントラ盤
★★★★★
映画のサントラということで、ビートルズ/ソロ時代の楽曲の再録音がたくさん聞けるのも嬉しいが、一番の聞き物はポールのソロとしては5本指の内に入るであろうバラードの名曲、NO MORE LONELY NIGHT だろうと思う。この曲ではエリック・スチュワート、デイヴッド・ギルモアの美しいギターが聞ける。そして再録音ではオーケストラを加えた、LONG & WINDING ROADがオリジナルを超える域まで達する出来 (少々サックスが臭いけど)。全体的には映画の演奏シーンに合わせたのか、ポールとしてはラフ目な演奏のものが多いが、それがかえってバンドらしくて○。デイヴ・エドモンズやクリス・スペティングらが参加しているのはこのパブ・ロック的な雰囲気を狙ったためなのかもしれない。ドラムスはおなじみのリンゴとジェフ・ポーカロで、仕上がりは想像の通り。選曲としては時期的にかなり偏りがあるものの、ポールの入門用のアルバムとして最適だと思います。私もお世話になりました。まずはこれです!!