ビーヴァーによると、赤軍兵士のドイツ人女性に対するレイプは4つの段階に分けられるという。第一段階は、ドイツに攻め入り、その領内の生活水準の高さを知った赤軍の兵士たちが怒りを燃やして、その怒りの矢を女性に向けていた段階。この段階のレイプには激しい暴力を伴っている。第二段階はやや落ち着いたものの、性的な戦利品として扱った段階。
次の段階はドイツ人女性の側からの接近として考えられる。レイプに暴力が伴わなくなれば、飢餓が進行する中であれば、特に食べさせなければならない子供をかかえている女性は、食物と交換で積極的に春をひさぐ段階だ。第二次大戦期の米軍兵士にレイプが必要なかったのも、大量にタバコや食料を保有していたからだ、としている。この段階でレイプと性的共用の区別はあいまいになり、最終的な第四段階では、「占領地妻」として同棲するようになっていったという(p.607)。
スターリングラードに関する著作で高い評価を得た著者が、この主題を扱うことになるのも当然の成り行きでしょう。
実際、読みやすく地図も判り易いのですが正直な所、目新しさを感じませんでした。
先にコーネリアス・ライアンによる66年出版の「ヒトラー最後の戦闘」という名著が存在するのですから、何らかのアドバンテージが欲しいところです。もちろん、60年代に知りえなかったソ連側の情報などは興味を引くものではありましたが、この価格を考えると相応だったかは疑問です。とはいえ、「ヒトラー最後の戦闘」は絶版のまま。第三帝国の最終局面を知るのには現在のところもっとも良い本かも知れません。